民主党解散論への2つの疑問

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民主党解散論への2つの疑問

塩田潮

 麻生内閣は支持率19%(12日発表の朝日と共同の調査)で危険水域だが、攻める民主党は世論調査でも各種の選挙情勢予想でも好調を維持している。当然、早期解散を唱え続けるが、2つの疑問が残る。9月までのどの時点で総選挙になっても必ず勝るという万全の態勢かどうか。自前のポスターで「政権交代準備完了」と高らかに謳っているが、本当に「準備完了」でいつ政権を手にしても大丈夫という段階かどうかだ。政権交代は「与党への不信と失望」と「野党への信頼と期待」を掛け合わせた数値で決まる。「与党への不信と失望」の大きさは説明不要だが、「野党への信頼と期待」は未知数で不安が伴う。

 もし今年のどこかで民主党中心政権が誕生すれば、来年夏の参院選が最初の大きな関門となる。その場合の「与党」は参議院で過半数を6議席超えているだけだから、自民党などの「野党」が次期参院選で改選議席を7以上上回れば、攻守所を代えた「新ねじれ国会」となり、民主党政権はたちまち窮地に陥る。政権交代を容認して1年前後で新政権を見放すほど、日本の有権者はせっかちで気紛れだとは思わないが、「信頼と期待」が「不信と失望」に急変すれば、一寸先は闇となる。共同の世論調査の「党首力」を見る項目(「問12・13」)で、小沢民主党代表は「指導力」「政策への期待」の2点では麻生首相をダブルスコアで圧倒しているが、「信頼感」「外交での顔」では及ばなかった。政府の専権事項の「外交」はともかく、「信頼感」はいまも小沢民主党の大きな克服課題だ。

 勝つために何が重要かという点が先行している感があるが、民主党にすれば満を持しての政権交代のはずだから、「出たとこ勝負」ではないはずだ。どんな政治を実現するのか、内政・外交の政策は、政権の構成は、といった点をもっと明確に打ち出す必要がある。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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