運賃高すぎ北総線裁判、驚きの「住民敗訴」判決 4年半審議の結論は「原告に訴える資格なし」

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この第二次訴訟の原告らは第一次訴訟で示された原告適格を満たしていると判断し、訴訟に踏み切った。しかし、判決が下された今年の3月14日までおよそ4年半の歳月を要している。この間、長男、次男が2018年3月に大学を卒業した。長男は就職して遠方に引っ越したため裁判の途中で訴えを取り下げた。次男は大学を卒業後、都内で暮らし始めたが父親の塾で講師をするためなどで1カ月に4~8回ほど北総線を利用しているとして原告にとどまった。長男・次男の通学定期券の費用を負担しなくなった山本氏も買い物や、塾のテキストの仕入れや議員としての公務などで北総線を月に8回ほどは利用しているとして原告にとどまった。さらに2017年4月から、山本氏の三男が千葉県柏市の中学校に通い始めて北総線通学定期を購入しているため、途切れることなく子どもの北総線定期代を負担しており、原告適格があると主張していた。

しかし、東京地裁(民事第51部・清水知恵子裁判長)は4年半にもわたり国交省の認可の不当性評価にかかわる審理を進めておきながら、3月14日に原告適格なしとして却下した。本案の運賃認可の違法性について判断しない門前払いである。判決文では山本氏と次男は定期券を購入せず、月に8回くらい利用する程度では、日常的な北総線の利用者とはいえないとした。また、三男の定期券代を負担している山本氏の状況についても、利用しているのは息子であり、山本氏は直接的に影響を受ける者でないという趣旨から原告適格を否定した。なお、三男については提訴後に通学定期券を利用し始めており、原告ではない。

第二次訴訟判決に疑問の声

4年半にわたり、行政処分の内容に踏み込んで審理をしておきながら、その途中で定期券を使わなくなったのだから原告適格なしで訴訟が却下されてしまう状況をどう評価すべきだろうか。北総線の訴訟は原告の個人的な利益のためというより、高すぎる運賃を認めた国の違法性を認めさせて運賃を引き下げ、多くの消費者の役に立ちたいという社会の公益のための訴訟であることは明らかである。消費者訴訟を数多く経験しているあるベテラン弁護士は、匿名を条件に以下のコメントを寄せた。

「裁判官は内心、原告の訴えに共鳴するものの、自分では判決を書きたくないので、自分が転勤する時期まで審理を繰り返させ、その後、転勤する。次の裁判官は、転勤が期待できないので、判決を書かざるをえないが、原告を勝たせるわけにいかず、また、中身に入ると、面倒な議論をジャッジしなければならない。そこで、門前払いのために原告適格を持ち出したいところだが、近時の動静からして、はじめから原告適格を否定することもできない。ついては、訴えの利益が消滅して原告適格がなくなったとの論法を使う」。

判決を言い渡した清水知恵子裁判長は提訴から3人目の裁判長だ(小林宏司裁判長⇒岩井伸晃裁判長⇒清水裁判長)。

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