ホリエモンロケットが拓く「超小型衛星」市場 宇宙データを利活用したビジネスが急拡大

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カギを握るのはJAXAだ。今回、JAXAは昨年5月に開始した民間事業者とパートナーシップを結ぶJ-SPARC(宇宙イノベーションパートシップ)の研究開発プログラムの1つにZEROを選定。宮城県にあるJAXAの角田宇宙センターではロケットエンジン開発試験が行われており、開発に必要な試験設備があることから、インターステラテクノロジズの技術者も受け入れる予定だ。

2023年に初号機打ち上げ予定の衛星打ち上げロケット「ZERO」(写真:インターステラテクノロジズ)

これまでJAXAは「他国への技術漏洩の恐れもあって、かつては(ロケットを共同開発している)三菱重工など特定の大手民間企業以外との技術協力に積極的とはいえなかった」(JAXA関係者や国内宇宙ベンチャー企業トップ)。しかし、今後はJ-SPARCなどの枠組みを利用して民間事業者との技術協力を積極化する姿勢を示している。

1.2兆円の宇宙関連市場を倍増

JAXAの姿勢が変化したのは「日本の民間宇宙産業が世界的に後れを取り始めた」(JAXA関係者)ことも理由にある。現在、宇宙産業の市場規模は世界で30兆円強(アメリカ・スペースファウンデーション調べ)とされる。これに対し、日本国内の宇宙関連市場は2017年時点で1.2兆円。日本政府は「宇宙産業ビジョン2030」を掲げ、2030年代の早期に国内市場を倍増させる計画だ。しかし、「(日本の宇宙産業は)技術はあるが世界的にみればビジネスとして小規模」(JAXA関係者)なのが実態だ。

小型ロケットの分野ではアメリカや中国が民間でも先行。アメリカのロケットラボ社はすでにロケットの打ち上げに成功しており、中国でもワンスペースが早ければ今年中にも小型ロケットで衛星を打ち上げるとみられる。

日本ではキヤノン電子やIHIエアロスペースなどが出資するスペースワンが2020年代半ばに年間20回のロケット打ち上げを目指している。「日本として打ち上げ需要を取りこぼすわけにはいかない」(複数の業界関係者)と意気込む。インターステラテクノロジズとしても開発に後れて需要を取り逃したくはない。

「後れているところがあるが、なんとかキャッチアップしていきたい」(堀江氏)。JAXAやほかの事業者と組んで海外の民間ロケット会社に追いつくことができるのか。日本のロケット産業は勝負の時を迎えている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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