30~40代の「孤独死」壮絶な後始末に見えた現実 今の日本では誰に起こってもおかしくない

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遺族が拒否したため、この費用の全額は大家の負担となった。塩田氏によると、この清掃費用をめぐって、大家と遺族が熾烈な争いを繰り広げることも珍しくないのだという。

人との交流がない人が増加

「平成27年版高齢社会白書(全体版)」によると、60歳以上の高齢者全体で、毎日会話をしている人が9割を超えているのに対して、1人暮らしの男性は約3割、女性は約2割が、2~3日に一度以下となっている。

しかし、近所付き合いに関して見てみると、一人暮らしで、「つきあいがほとんどない」と回答した女性はわずか6.6%であるのに対して、男性は17.4%と極端に高い。60歳以上の一人暮らしの男性は、近所付き合いや人との交流がなく、頼れる人がいない人が多いというのが現実なのである。

『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

このデータは高齢者に限ったものだが、孤独死は現在の高齢者だけでなく、これから高齢者となる私たちにも身近な問題である。生涯未婚の場合だけではなく、結婚したとしても残された側はいつか必ず1人になる。

単身世帯が右肩上がりで増え続ける現在、孤独死は誰の身に起こっても不思議ではない。現に塩田氏のもとには、毎日何件も、ひっきりなしに不動産業者や遺族から電話で依頼が入る。これから春になり、気温が上がると、その件数は冬場の何倍、何十倍にも膨れ上がる。

「孤独死する人は、やはり人と疎遠になっている人が多いですね。僕は1人で亡くなるのは悪いことではないと思うんです。でも、早く見つかったほうが部屋のダメージも、ご遺族や大家さんの費用の負担も少なくて済む。本来であれば、自分たちのような仕事はなくなったほうが社会のためにもいいと思うんですよ」

塩田氏は、鳴りやまない電話対応の合間に、そうポツリとつぶやいた。増え続ける孤独死にさまざまな思いを抱きながら、事件現場特殊清掃士たちは、今この瞬間も、過酷な孤独死現場に向き合い続けている。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)『母を捨てる』(プレジデント社)など。

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