スタンフォード大に合格した移民親子の大奮闘 「日vs米」受験競争どちらが過酷?(後編)

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なかでもサマーキャンプでのボランティア経験は大きかった。

「ここでも『ダイバーシティ・プログラム』が役に立ちました。通常だったら一夏で100万円ほどかかるサマーキャンプに特別価格で参加させてもらえるんです。

第7学年から第10学年まで4年間キャンパーとして参加し、第11学年と第12学年では、子どもたちの世話役のジュニアカウンセラーというボランティアの立場で参加しました。高校によっては、大学受験対策も視野に入れて、このようなボランティアを必須にしているところもあります」

トロンボーンは小学校のオーケストラで始めたものだ。セント・アンズ・スクールにオーケストラはなかったが、学校で週1回のマンツーマンレッスンをしてくれた。これも私立学校ならではの面倒見である。フェンシング部では、一軍の主将を2年連続で務め、大きな大会で上位を獲得した実績があった。これらのほとんどが、学校内で完結した。

特殊技能をアピールするための「ポートフォリオ」というオプショナルのアピールポイントもある。そこにはトロンボーンやピアノの演奏動画をアップロードした。それも学校が全面的にサポートしてくれた。

日本の受験勉強体験がアメリカでも活かせた

私立学校のよさを身を持って感じたので、6歳年下の長女のみどりちゃんも、公立小学校からの編入を試みた。アメリカではきょうだいがいれば、入学が優遇されるのだが、それでも3年待たされ、小4のときにセント・アンズ・スクールに編入できた。みどりちゃんはお兄ちゃんのおかげで、「スパルタン・アカデミック・ブートキャンプ」の2年間を経験しなくてすんだ。

ただし、その代わり、学費免除額が少ない。日本の私立学校の比ではない額の学費を支払っている。それでも、学校の中だけで、ほとんどの大学受験対策ができることを考えれば安いものだと渡辺さんは笑う。

「日本の受験を一発勝負の短距離走に例えるなら、アメリカの大学受験は、生育環境から子育てのあらゆる選択肢までがカウントされる18年越しのマラソンです。

お金はかかるし、そもそも親の人脈や情報リテラシーがなければいい教育へアクセスすることすらできません。でも、1回限りの試験の成績で判断するのではなく、努力のすべてを見てくれているという意味で、日本の受験よりもアメリカの受験制度のほうが人間的で優しいと感じました」

一方で、渡辺さんは意外なことを口にした。

「私は日本の受験勉強をガツガツやって育ちました。大学生の頃は予備校で、浪人生に勉強のアドバイスをするアルバイトをしていました。実はその経験が、アメリカでの子どもたちの受験対策にも大きく役立っているのです。だって、試験のしくみが違うだけで、合格のために必要な材料を期日までに着実に集めていくという作業は同じだからです」

つまり、日米の受験勉強の違いは、集める材料の中身の違いでしかないということだ。集める材料の種類によって得意・不得意のバランスは多少変わるだろうが、大学入試制度を変えても結局のところ、受験に強い人の条件はあまり変わらないのかもしれない。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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