アップルが発表「iPhone向け新サービス」の全貌 「サービスの最適化」で端末の価値を高める

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つまり名前の通り「Apple TV+」、すなわちApple TVにアップルが考える高品質なコンテンツを“プラス”していこうという意図であることがわかる。

質の高いコンテンツを、プライバシー情報を一切使わずにユーザーに届けるというメッセージに発表会場は大いに盛り上がっていた。Steve Jobs Theater会場内の熱気は、アップルのコンテンツに対するコミットメントの深さを反映したものだったと言える。

文化的・言語的な壁が低いApple Arcade向けに作られる100を超えるゲーム(セガのソニック・ザ・ヘッジホッグシリーズや、スクウェア・エニックスの坂口博信氏など日本のクリエーターも参加している)は、日本でもアメリカと同レベルの品質で楽しめるだろう。

また、Apple TV+の中でも、普遍的なテーマを背景とした連続ドラマ、あるいは映画として制作される長編映像作品なども、海外ドラマや洋画と同じように“よいクリエーティブ”であるならば、当然のように受け入れられるものだと思う。

求めたい「日本向け」のサービス強化

しかし、“テレビ”や“ニュース(雑誌を含む)”といったコンテンツは、本質的に地域性が高いコンテンツでもある。

例えばジェニファー・アニストンとリース・ウィザースプーンを中心に制作される朝の番組「Morning Show」が質の高い番組になることは容易に想像できるが、それが日本人の琴線に触れるものになるか予想することは難しい。

これがスポーツのライブ配信となればさらに地域性が高くなる。

またウォールストリートジャーナルやロサンゼルスタイムスなどがニュースソースとして追加され、アメリカの300種以上の雑誌も9.99ドルで読み放題となる「Apple News+」は、フランス語版を含むカナダ向けにもサービスインとなる。このために30種以上のカナダ発行の雑誌、それにカナダ最大の新聞社であるStarと契約したという。年内には、英国やオーストラリアに展開するとアップルは話しているが、言い換えれば“英語圏”に限られている。

こうした言語の壁は、単に翻訳だけの問題ではない。話者・読者が多い言語の地域向けには提供できても、少ない言語では同じようなサービスの品質を保てない可能性がある。これは従来のApple TVでも指摘されていた部分だ。

例を挙げると、Apple Musicのプレイリストはアメリカでは頻繁に更新され、同じリストでも中身がダイナミックに変化していく。日本向けのプレイリストも更新はされるものの、アメリカほどのダイナミズムはない。

iPhoneの販売比率が高い日本市場だが、グローバルでみると日本語の話者・読者が少ないのは明白だろう。そうした中で、アップルは英語圏と同じようなコンテンツの品質を日本市場向けにも提供できるのだろうか(あるいは提供する意思があるのだろうか)?

スティーブン・スピルバーグ、J・J・エイブラムスといった一流監督が参加するプロジェクトに興奮しながらも、そこには一抹の不安も感じる。

NetflixやAmazonビデオは、グローバルに各地域で根差したコンテンツを増やすため投資地域を多様化している。サービスの思想やデバイスとの統合度、質の高さなどは評価できるが、正式なサービスインの際には“日本市場向けコンテンツへの懸念”が杞憂であったと笑いたいものだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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