東上線「川越特急」登場、東武vs西武「春の陣」 観光輸送では西武が先行、競争か協調か

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まずは、なんと言っても種別名だ。東上線にはかつて「特急」が走っており、池袋と川越を28分で結んでいた。また現行ダイヤにおいても「快速急行」は同区間を29分で結んでいる。しかし、東武は種別名にこだわった。

「従来からある種別の『快速急行』では鉄道に詳しくない方にインパクトが弱い。また単に『特急』という種別名だと速いとは思われるだろうが、どこに行くのかがわからない。そうであれば、地名をつけて『川越に行くのにいちばん速い列車』だとわかりやすい種別とした」と東武の担当者は言う。

名前だけでなく「速さ」そのものにもこだわった。川越特急は池袋と川越の間を26分で結ぶ。そのためにできる限り停車駅を減らした。はじめは池袋から川越までノンストップでの運行を考えていたが、東上線内第3位の乗降客、かつ伸びがある朝霞台にも停車することにした。朝霞台はJR武蔵野線との乗換駅。JR武蔵野線は東京の外郭を結ぶことから、広範囲からの集客も狙いの1つだ。

一方で、所要時間を重視するために和光市や志木といった沿線の主要駅が通過となった。横浜へ直通する地下鉄副都心線方面からの乗客に関しては、川越特急と地下鉄直通列車を組み合わせて使ってほしいという。

列車内にはコンシェルジュ

車両は座席指定の通勤列車「TJライナー」と同じ50090系を用い、クロスシートの状態で運用に投入。ロングシートの「通勤電車」とは違う座席の向きで「非日常」を演出しようという狙いだ。車内には、池袋駅や川越駅で案内を行っているコンシェルジュを同乗させる。まずは1日1往復程度の乗車で様子をみるとのことだが、タブレットを携帯させ、東上線に乗っている間だけではなく、その先の観光や帰宅までをサポートする。

「池袋・川越アートトレイン」の外観。1両ごとにラッピングのデザインは異なる(撮影:尾形文繁)

車両の見た目にも一工夫することにした。「川越特急」運行に先立ち、2月12日から「池袋・川越アートトレイン」を運行している。取り組み自体は豊島区のアートプロジェクトと連携しているが、この車両を川越特急に投入することで彩りを加え、若い女性や外国人へ訴求していきたいという。また、10両編成の各車両でデザインが異なることから、ほかの車両を見るためのリピートも期待している。

先に述べたように、この列車はPR戦略の側面も強い。東武は川越特急の運行により「東上線に川越という街があることを知ってもらう」ことを狙っている。そして中長期的には、東上線全体の沿線ブランディングをしたいという思惑のようだ。

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