東上線「川越特急」登場、東武vs西武「春の陣」 観光輸送では西武が先行、競争か協調か
ラッピングトレインによる話題づくりも西武は先駆けて行っている。台湾で人気のキャラクター「LAIMO」のラッピングトレインや日本国内・台湾で人気のキャラクター「カナヘイの小動物」とコラボしたラッピングトレインを運行しており、「カナヘイ」のキャラクターを用いた川越観光のPR動画も制作している。
むしろ今回、東武は「川越特急」で行う各施策でようやく西武に追いついてきたとも考えられる。そういう意味では西武は「余裕あり」という見方もできるだろう。
東武は川越駅から蔵造りの街並みまで約2キロも離れている。同社の担当者は「列車内ではグループの東武バスが運行する『小江戸名所めぐりバス』の案内放送を行う。また川越駅から蔵造りの街並みへは東武バスの路線バスの本数が多く、二次交通が充実している」という。
だが、バスとの連携でスムーズな案内ができるか懸念がある。川越の駅前を見ても、すぐには蔵造りの街並みへの行き方はわからない。平日昼間に15分ほど観察していただけでも、10人弱の観光客がマップを片手にバス乗り場を探していた。川越市と連携し、駅舎からバス停への案内ペイントを施すなどの工夫がほしいところだ。
また、帰りの交通手段としての川越特急にも不安が残る。下りは池袋が始発だが、上りは川越よりも北の森林公園が始発駅となる。そのため、川越からの利用者が乗るまでに席が埋まってしまう懸念がある。西武は本川越が始発駅であるメリットを生かし、座って帰れることで特急「小江戸」を売り込んでいる。
とはいえ、TJライナーと同じ車両を使うため、運用の都合で森林公園始発になるのはやむをえない点だ。また、設備投資が少ない中で最大限の効果を狙いたいという東武の思惑を考えると、川越駅や川越市駅始発の設定は難しいところかもしれない。
何度も行きたくなる魅力発信を
さらに、東上線はほかの観光地などのコンテンツについてPRが弱い点も気になる。西武は「周遊型」で川越をPRしているが、こうした施策は単純に周遊を促すだけではなく、何回も来てもらうことを狙っている。東上線は「何度も通いたくなる」沿線としてはまだまだ魅力の発信が足りない印象が否めない。
せっかく越生の梅や小川町の和紙といった「日本らしいモノ」もあるので、もっと積極的なコンテンツ発信を望みたい。東武は今後、川越に関してSNSや動画配信による魅力発信を行う予定であるため、ぜひここに沿線の他コンテンツも組み込んでいくべきだろう。
いくつか懸念事項も挙げたが、川越特急は東上線に特急専用車両がない中でインパクトのある列車を設定したという印象だ。まずは西武のような周遊型の沿線コンテンツが作れるか、東武の沿線ブランディングは「川越特急」でようやくスタート地点に立ったばかりと言えよう。
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