増税前と後、家購入で「損」しないのはどちらか 年収別にいくら変わるのか「独自試算」した

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親や祖父母から住宅を取得するための費用として、贈与を受けようと思っている場合は、「直系尊属からの住宅取得資金の贈与の非課税制度」を利用して、贈与税がかからないように考えているだろう。

新築住宅の購入や住宅の新築で消費税率10%が適用される場合は、この非課税枠が大幅に拡充されるので、それを見逃す手はないだろう。8%の場合や中古住宅を購入する場合は、最大で700万円または1200万円(質の高い住宅に限る)だが、10%が適用される場合は最大で2500万円または3000万円(質の高い住宅に限る)に引き上げられる。

贈与税は最大55%で非課税メリット大

贈与税は、最大で55%になるほど税率の高い税金なので、非課税となるメリットが大きい。その枠が引き上げられるので、消費税の増税よりも減税効果が大きい場合もある。しかも、2020年4月以降は徐々に非課税枠が縮小されるので、タイミングにも注意したいところだ。

このほかにも注意点がいくつかある。

まず、ここで利用した制度はどれも、適用されるには一定の条件があること。条件を満たすかどうかは、それぞれの制度で判断していく必要があり、必ず利用できるわけではない。

次に、住宅については「経過措置」というものがある。新築住宅などは契約をしてから建物が完成して引き渡されるまで時間がかかる。そのため、消費税率が引き上げられる2019年10月の半年前、つまり2019年3月末までに契約をすれば、引き渡しが10%になってからでも旧税率の8%が適用されるというものだ。

ここでいう契約とは、建築工事を発注する契約や売買契約に変更工事を伴う場合などだ。リフォーム工事や新築工事などは、半年間しっかり対応すれば、10%になる10月より前に引き渡しを受けることも可能だ。税率だけを見て慌てて契約してしまうことのないようにしたい。

このように見ていくと、消費税増税分を減税で差し引く仕組みができているが、どういった住宅を取得するのか、住宅資金をどう調達するのか、その額はいくらか、タイミングはいつかなどによって、状況は変わってくる。大きな買い物であるだけに、自分の場合はどうかをしっかり見極めて、冷静に対応することが大切だ。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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