しかし、修さんは「気持ちが弱っている女性をここぞとばかりに口説く」ような男性ではなかった。ダンス仲間として絵理さんを心配し、親身になって話を聞き、気分転換に鎌倉に遊びに行こうと誘った。下心は一切なかったと語る。腹黒い筆者にはちょっと信じられないが、やや「不思議くん」なところがある修さんならばありうるだろう。
鎌倉で1日一緒に過ごし、絵理さんの気持ちは修さんに完全に移った。その夜、別れる前に絵理さんのほうから「好きです。付き合ってください」と告白をしたのだ。
「今から考えると、いいタイミングだったとは思えません。でも、この人だったら断られて恥をかいてもいい、気持ちを素直に伝えたい、と思ったんです。いろんなプライドでがんじがらめになっていた私としては珍しいことでした」
現代の独身男性は「草食化」しているとよく言われる。筆者の観察では、彼らは女性に関心がないわけではない。かつてよりも慎重になっているだけだ。不用意なことをして相手を傷つけたくないし自分も傷つきたくない。わざわざリスクを冒さなくても1人だって十分に楽しく生活をしていけるのだ。だからこそ、もし好きになったら、女性のほうからでも素直に気持ちを伝えるべきなのだと思う。
しかし、修さんは相変わらずのマイペースだった。
「しばらく考えさせてほしい。付き合うならば好きという気持ちがほしいから」
絵理さんはショックを受けたりはせず、修さんの答えを受け入れた。その後は2人で食事に行くようになり、2週間後には修さんのほうから「好きです」と告白。現在に至る。その2週間に修さんは自分の気持ちと向き合ったようだ。
自然体でいられて、ちょうどいい距離感
「彼女はかわいいですし、話も合います。僕はいろいろ趣味があって家庭的な男にはなれないでしょう。そんな自分を受け入れてくれる、とも感じました」
付き合ってみると、修さんと絵理さんは人間関係の距離感が似ていた。毎日のように連絡を取り合う必要もないし、かといってメールやLINEが来たら返信は怠らない。デートの日程調整などの事務連絡もするし、おいしい飲食店などの情報交換をすることもある。
「ちょうどいい関係だな、と思っています。一緒に暮らしていてもお互いに何かを強制することもなく、自然体のままでいられます。彼女が男友だちと飲みに行ったりするのも構いません。その人としか楽しめないことはありますからね」
あとはお互いの親に会えばいつでも結婚できる。ただし、現在求職中の絵理さんは「修さんの家族に会うのは次の仕事が決まった後にしたい。仕事もない人とは思われたくないから」という意見を譲らない。結婚後も外で働いていくつもりだ。生き方が真っすぐでやや不器用な絵理さんを、修さんは面白そうに見つめていた。
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