出生前診断で「判明」、それでも私が産んだ理由 ダウン症児を授かった親たちの告白

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「そのときは落ち込みました。親戚に医者がいるんですが『当然、中絶するんでしょ』と言われ、『産むつもりです』と答えると、『何のために出生前診断を受けたの?』って聞き返されたこともありました。これだけ言われると落ち込みますよね。最後は意地になっていた部分もありましたね、どこかでダウン症を肯定してほしいっていう。

でもある日、いつものように『お腹の子どもがダウン症なんです』と告げたら、案の定『かわいそう』と言われ、はっと気がつきました。あ、この人のところに生まれてきたらかわいそうなんだなって。僕らのところへきて正解だったってわかったんです。

自分も含めてですが、自分の子どもに障害があるとわかるとどうしていいかわからなくなる人がほとんどです。その状態で医者に『出生前診断を受けますか?』と言われると、『はい』と答えざるをえない。だって知識もなく、あるのは大変、不便といったイメージだけ。そうなると、やはり選択の幅は狭くなると思うんです」

一方、「産む」という決断をしたものの、妊娠中、不安は隠せなかったと妻の紀子さんは振り返る。

「不安が増すので、ネガティブな情報は集めませんでした。またダウン症に関して無知からくる不安があったので、まずはダウン症のことを知ろうと思い、ダウン症の子育てブログを見たり、実際に育てているお母さんたちと知り合いになり、ダウン症に関する情報を集めました。

出会ったお母さんたちみんな明るくて元気なんです。今までいた狭い世界からどんどん新しい世界が広まり、楽になったのを覚えています。当時は不安もありましたが、今はほかの姉弟と変わらずとても大切でかけがえのない守るべき存在です」

成人する10年後、20年後の福祉は未知数

取材中も時折クシャっとした笑顔を見せながら、私に近寄り、拙い言葉とジェスチャーで必死に何かを訴えてきてくれる倖太くん。夫婦には3人の子どもがいる。倖太くんは2番目の子で長男だ。

「弟はまだ小さいのでわかりませんが、お姉ちゃんは薄々気がついていますね。ダウン症っていうことまではわかりませんが、倖太は周りの子どもに比べると言葉が遅いので、そこに関しては疑問を持っているようで、今は簡単に『耳が悪いからだよ』って言っています。

もちろん不安はありますが、今は何とかなるかなって思います。将来はあまり考えないようにというか、今、考えても仕方ないかなって思いますね。10年前、20年前と比べて福祉を取り巻く環境がガラッと変わったように、この子が成人する10年後、20年後はどうなるかわからないので」

ダウン症の子を持った夫婦は次の子を持つかどうか、その悩みに直面する。

「弟さんのときは、不安はなかったのですか?」と質問してみた。すると紀子さんは「もちろんありました」と答え、一呼吸置き「でも出生前診断は受けませんでした。倖太と違い、超音波検査で指摘されなかったのもありますが、倖太のときに出生前診断を受けたことによって相当悩んだことも一種のトラウマとして残っているのも事実です。そして何があってもわが子に変わりないという思いもありましたから」

次ページ一方、今でも悩み続けている金井さん(仮名)は…
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