出生前診断で「判明」、それでも私が産んだ理由 ダウン症児を授かった親たちの告白

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「ここでは妊娠初期、中期、後期に分け、超音波画像による “胎児ドック”を行っています。赤ちゃんを診たうえで、妊婦の胎盤の一部を採取する絨毛検査や羊水検査を選択するかどうかも決めることができます」

最先端の超音波検査と長年培ってきた技術によって、赤ちゃんの状態をより詳しく診る“胎児ファースト”をモットーとしている夫医師。元気な赤ちゃんの姿を見て喜ぶ母親がいる一方、厳しい現実を突きつけられる母親がいることも忘れてはならない。夫医師は数多くの出生前診断に向き合うカップルをサポートしてきた。

「陽性を受けた妊婦の95%は中絶を選択するといわれていますが、その陰では何十人、何百人の方が涙を流してきたかを知ってほしい。生まれてきた子どもの面倒を見るのは母親、両親です。両親の選択を誰も責める権利はありません。育てるのは大変なことなのです」

何らかの障害があって生まれると、確かに母親の負担は増加する。実際に脳性麻痺児を抱える私も、リハビリや定期的な健診が必要になり、日常生活とのバランスをとるのが難しい。さらに医療的ケアを要する子どもの場合、今の日本では保育園に預けることも厳しく、母親が就労することも難しいのが現状だ。

5%の母親たちがわが子を受け入れるまで

出生前診断によって厳しい現実を突きつけられ、95%のカップルが悲しい選択をする一方、5%のカップルは変えられない現実にもがき、苦しみながらも受け入れていることを忘れてはならない。

出生前診断でわかる染色体異常の中で、最も多いのがダウン症だ。ダウン症とは、染色体の突然変異によって起こるものとされている。通常、22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて計46本の染色体を持っているが、ダウン症の場合、21番の染色体が通常2本のところが3本になっているのだ。特性として、筋肉の緊張低下、特徴的顔貌、発達遅滞などが見られ、全体的にゆっくりと発達する。800~1000人に1人の割合で生まれてくる。

それが事前にわかりながらも、産む決意をした親たち数人の声を聴くことができた。

私は失礼ながら冒頭の矢口さん夫婦に、「なぜ、産もうと決断できたのか」を聞いてみた。貴史さんは「だって何があってもわが子ですから」と迷いなく答えてくれた。親であれば誰しもが思う自然なことに変わらない。しかし、それを受け入れるのはそう簡単ではないはずだ。

お腹の子どもがダウン症とわかってから、ダウン症は世間でどう思われているのか、それを知るために、貴史さんは会う人会う人に「お腹の子どもがダウン症なんです」と告げたという。しかし、貴史さんの予想とは裏腹に「かわいそうに」「中絶するんでしょ」といった心ない言葉が返ってきたそうだ。

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