大阪「ダブル選」へ、存亡かけた維新の大勝負 官邸は困惑、本命候補空振りで自公にも溝

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ただ、自民府連は当初、浮動層も含めた幅広い反維新勢力の結集のため、本命候補として大阪出身のタレント、辰巳琢郎氏に的を絞り、二階幹事長も乗り出して説得した。しかし、辰巳氏が「家族の同意が得られなかった」ことなどを理由に固辞したため、次善の策として小西氏擁立に切り換えたのが実情とされる。このため、自民党内には「知名度がカギとなる短期決戦だけに、辰巳氏なら勝てたが、地味な小西氏では厳しい戦いになる」との不安も広がっている。

そこで勝敗のカギとなるのが選挙戦での「反維新の結集」(自民府連)だ。都構想には自民だけでなく公明、共産、立憲民主、国民民主の各党も反対の立場で、「各党が維新包囲網を固めて組織戦で挑めば勝機はある」(同)とみられている。政党色が薄い小西氏には、自民以外の各党も推薦に前向きとされる。ただ、大阪で維新、自民に次ぐ集票力を誇る公明は、「地方選は自主投票が原則」などとあいまいな姿勢を示す。

府市両議会の構成をみると、いずれも与党の維新が最大勢力だが過半数には足りず、公明党の協力がなければ住民投票実施の議決は困難だ。このため維新は国政選挙で公明党と住み分けすることで貸しを作り、同党との密約を結んで住民投票実施を模索してきたとされる。しかし、昨年末に公明との交渉が行き詰まり、松井氏が「公党の裏切り」と密約の存在を暴露。両党は全面対決の状況に陥った。維新がこれまで候補者擁立を見送ってきた大阪の4選挙区を含め、公明現職がいる衆院小選挙区での対抗馬擁立をちらつかせたことが、両党のさらなる感情的対立を生んでいる。

野党共闘を牽制、公明の離反を促す

一方、自民党の二階幹事長は11日、「みんなの力を借りないと大阪では勝てない。まずは自民党が死に物狂いでやることで、協力しようという党が出てくる」と自民府連に決起を促した。直近の衆参選挙での比例選獲得票などをみれば、公明も含めた反維新勢力が結集すれば維新を圧倒できるからだ。

公明党府本部代表の佐藤茂樹衆院議員も「選挙の私物化、党利党略で府民、市民が不在。税金の無駄遣いそのものだ」と不満を爆発させた。しかし、自公連立政権での二階氏のパートナーともなる斉藤鉄夫公明党幹事長は「地元の調整を見守る」と慎重な姿勢だ。次期国政選挙で維新と住み分けられなければ、公明の議席減が避けられないからだ。だからこそ松井氏らも「自民と共産も含む主要野党が共闘するのはまったくの野合」と反維新結集の動きを強く牽制、公明の離反を促している。

そうした中、首相官邸の微妙な立場が事態をさらに複雑化させている。安倍首相はかねて橋下徹前大阪市長と親交があり、菅義偉官房長官も松井氏との親密な関係で知られる。毎年末には定例的に4者で懇談するなど、交流を深めてきた。維新が憲法改正に積極的なため、改憲実現を悲願とする安倍首相も国会の改憲論議での維新の協力にも期待している。

しかも、今年の安倍外交の重要な舞台となる6月下旬の20カ国・地域(G20)首脳会議は大阪での開催で、松井氏らとの連携は不可欠。さらに、松井氏らが誘致に全力を挙げた2025年の国際博覧会(万博)の大阪開催は、首相ら政府側の尽力もあって実現にこぎつけた経緯もある。このため、維新は「安倍政権の補完勢力」(立憲民主幹部)との見方が定着している。

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