大阪「ダブル選」へ、存亡かけた維新の大勝負 官邸は困惑、本命候補空振りで自公にも溝

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維新もこれまで政府が提出した重要な与野党対決法案で賛成に回ることなどで「親安倍の姿勢」(自民幹部)をアピールしてきた。維新幹部も国政政党としての立ち位置を「与(よ)党と野(や)党の間の“ゆ党”」と公言してはばからない。だからこそ首相サイドは、今回ダブル選で自民と維新との関係が崩壊することを恐れている。

4月21日投開票の統一地方選後半戦には、安倍首相の自民党総裁3選後初の国政選挙となる、衆院大阪12区と同沖縄3区の補選が実施される。アメリカ軍沖縄普天間飛行場の辺野古移設の是非が問われた沖縄県民投票で反対票が圧倒的だったこともあり、沖縄3区補選での自民苦戦は必至。それだけに自民、維新、主要野党の三つ巴の戦いが想定される大阪12区補選で自民が敗れれば、安倍政権にも大きな打撃となる。自民幹部も「大阪は絶対に落とせない」と危機感を露わにしているが、この補選でも勝敗のカギを握るのは公明党だ。それだけに首相サイドは今回のダブル選を「あちらを立てればこちらが立たず」(側近)と板挟みの苦悩を隠せない。

反維新結集に向けて自民との共闘に前向きな共産党は、共闘の条件の1つとしてと「カジノ誘致への反対」を挙げている。しかし、カジノ誘致は安倍首相らと維新の連携で進められているもので、この点での自共共闘は「首相らの方針と真逆」(自民幹部)にもなる。さらに、自民党が国会で激しく対立する立憲、国民両党との共闘に走れば、「いくら大阪の特殊事情といっても、国民の不信を招く」(自民長老)のも避けられない。

ダブル選があぶり出す安倍政権の魑魅魍魎

自民党内では、本命だった辰巳氏が固辞した背景には「首相サイドの圧力があったのでは」との見方も広がる。「地味な実務家を候補に選んだのは、ダブル選を維新勝利のための消化試合にする狙いがある」との解説すら出ている。今回、二階幹事長が反維新結集の旗振り役となっているのも「首相への揺さぶり」との見る向きが少なくない。

首相は12日夜、銀座のステーキハウスで二階氏と懇談した。麻生太郎副総理兼財務相、甘利明党選対委員長、萩生田光一自民党幹事長代行ら首相と親密な政府与党幹部も同席し、二階氏もご機嫌だったとされる。永田町では「政界はキツネとタヌキの化かし合い」が常識とされるが、今回の大阪ダブル選の展開は「安倍政権を取り巻く魑魅魍魎の姿をあぶりだした」(自民長老)ことは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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