親が子を「欠けた月」と見るから不幸せになる 家で過ごす時間が少ない父親にできること

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ポイントは、「この人は満月(完璧)だ」と頭で考えるのではなく、「もともと完璧なのだ」という「前提」からスタートすること。少しわかりにくいかもしれませんが、「三日月なんてない、もともと満月」だということは、「前提」として理解できるはずです。人間もそのように捉えるわけです。

子どもの「自己肯定感」を引き出すのが父親の役目

先ほどの、お子さんの発達障害を心配する母親の話に戻りますが、夫婦がお互いを「満月」として見ることで、夫婦関係が多少なりとも上向きになると、「相手のせいかもしれない」という疑念が消え、「相手はすばらしい個性を持つ存在だ」という意識に変化していきます。

そして、夫婦の関係がよくなると、それに呼応するように、親子関係やお子さんの心の不調が改善していくことはよくあります。子どもに接するときの親御さんの「マインド」が変わるからです。

多忙でなかなかお子さんと触れ合う時間がない父親であっても、母親に負けない愛情をお子さんに抱いているのは間違いないでしょう。しかしながら、世の父親の多くは、お子さんを思うがあまり、いつも「三日月」として見てしまいます。母親と一緒になって注意したり指示命令したりするのは、子どもをそもそも三日月と捉えているからなのです。

父親としての愛情から、「なんとか欠けている部分を補ってあげよう」「ここの部分を足してあげよう」とする。でも、そうやって付け足してできた丸は、きれいなまん丸にはなりませんし、そもそも付け足す必要なんてない。もともと子どもは「満月」で、まん丸なのです。

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「何かが足りない」と思うのは、あくまで父親や母親の認識です。勉強が不得意な子どもに対して、「この子は頭が悪いから、もっと勉強させなくては」と一方的に思うのは、くり返しますが「子どもを三日月と捉えているから」です。

スポーツが得意だったり、絵が上手だったり、子どもには勉強以外にさまざまな能力があるかもしれない。学校の教科にはない才能や美点を持っている子どもはたくさんいます。

日本の学校教育の多くは今のところ、同じことを学ばせて特定の(主に勉強)能力を比べ、競争させているのが実情です。決められた知識を頭にたくさん詰め込み、アウトプットできれば「頭がいい」とされますし、それが苦手な子どもはなかなか評価されず、自己肯定感をなくす一方となります。

本来は、どの子どもも、もとから「満月」。大げさな言い方ですが、一人ひとり、才能豊かなのです。日頃から「キミはすばらしいんだよ」というマインドでお子さんに接することが基本となりますが、それをお子さんに「教える」のではなく、お子さんから「引き出す」ことが、一家の主人である父親がやるべき、子育ての基本的な姿だと私は思っています。

宮島 賢也 精神科医・産業医

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みやじま けんや / Kenya Miyajima

1973年、神奈川県生まれ。防衛医科大学校卒業。研修中、意欲がわかず精神科を受診、うつ病の診断を受ける。自身が7年間抗うつ剤を服用した経験から、「薬でうつは治らない」と気づき、食生活と考え方、生き方を変え、うつ病を克服する。その経験を踏まえ、患者が自ら悩みに気づき、それを解決する手伝いをする方向へと転換。うつの予防と改善へ導き、人間関係を楽にする「メンタルセラピー」を考案する。心の深い世界を知ったことから、さらに探求を開始し、現在は産業医などをしながら、心の不調の予防や教育により一層関われる方法を模索中。

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