東京の不動産価格がこれから「下落」する必然 23区は住宅「選び放題」の時代が到来する

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なお23区内に居を構えられるのなら、都心の会社へおおむね1時間以内で通勤できるはずです。そうなれば、これまでの神奈川や千葉、埼玉からの通勤を前提としたときのものと、異なる生活が可能となります。

例えばこれまでの通勤では、なかなか難しかった会社までのバス通勤が現実のものになるかもしれません。私がオフィスを構えている新橋から六本木に向かうにはJRや地下鉄より、都バスでのアクセスのほうが圧倒的に早いです。

そしてこの路線は六本木ヒルズ近辺に居住する人たちが新橋や銀座まで出る際、とても便利な路線でもあります。こうした路線が、朝夕の通勤に使われるだけではなく、六本木に暮らす人が増えることによって、より生活に密着した普段の足として再発見されるかもしれません。

通勤風景は大きく変わる

自転車通勤もより増えるでしょう。朝夕の都心の景色を見ていれば、如実に自転車通勤者の数が増えていると感じます。加えて自転車シェアリングを行う企業や行政区が増加したことで通勤のみならず、最寄り駅や関係先までの「ちょい乗り」が気軽にできるようになりました。

さらに日進月歩で進化しているのが自動運転技術です。自動で車が街を行きかうようになれば、通勤の風景はまた大きく変わることでしょう。 

いずれにせよこうした動きは、これまでの「鉄道頼り」だった都内の交通手段のあり方を変えてしまう可能性を秘めています。つまり、これまでにあった「駅から徒歩何分」「都心まで電車で何分」という絶対的な価値基準が、住まい選びの条件としては後方へと追いやられ、自分たちが根を下ろす足元の街の環境や機能へ、あらためて目を向けることになりそうです。

では都内の不動産がリーズナブルになり、都心居住がより進展していくと、これまでの交通体系、とくに鉄道にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

戦後高度成長期から平成までの首都圏の鉄道会社の戦略とは、地方の人々を沿線に集めてその住まいを提供していく、ということが基本方針でした。しかしこの戦略は、どうやらこれからの東京では成り立たなくなる可能性が生じ始めています。都心から1時間以上かかるような鉄道沿線の駅は、今後住宅地としての機能がより縮小していく可能性が高いからです。

次ページポイントは「都心まで1時間」という通勤限界ライン
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