日本企業が「非効率な面接」をやめられない事情 「安上がり」「前例踏襲」がもたらす思考停止

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AIは人間がつくった文書を大量に読み込まされると、人間の脳内にある偏見や差別的な感情までも反映してしまいます。こうしたことのチェック機能を果たすのはやはり人間であり、完全に「脱人間的な選考」にシフトするにはまだまだ課題がありそうです。

「官僚的な組織」であることの弊害

また、2016年に『人事評価はもういらない』(松丘啓司著・ファーストプレス)という本が出版されたときは、「アメリカを代表する企業ゼネラル・エレクトリック社(以下、GE)が人事評価をやめた!」と人事担当者の間で騒然となりました。正確には人事評価を完全にやめたわけではなく、半期に一度や1年に一度の人事評価ではなく、もっと短いスパンでマネジャーから部下にフィードバックする「リアルタイムフィードバック制」に移行したようです。

報酬に関しても、部門ごとに原資となる「サイフ」を渡し、マネジャー間の相談によって社員の報酬額を決定していくという画期的な制度でした。年に一度の評価では、上司であるマネジャーが自分をどう評価しているのかわかりにくいですが、リアルタイムに、その都度フィードバックがあれば、評価や報酬への納得感も高まります。

ただし、これはGEが「自立した社員がそろい、フラットな組織を実現している企業」だからこそできること。GEにおける上司と部下の関係は、マネジャーが部下を管理する「上下関係」はなく、部下のパフォーマンスを上げるためのサポート役として存在するという「フラットな関係」なのです。

対して、日本のほとんどの企業はヒエラルキー型(ピラミッドのように上下に序列化された階級制)の組織になっています。つまりは官僚制の組織ということです。このような組織の特徴として、指揮命令が頂点から下には伝わりやすいが、逆に下から上には伝わりにくいことがあげられます。そのため、現場から「新しいことに取り組んでみたい」「改革をしよう」などと提案をしても、上にはほとんど話が伝わらず、事態はなかなか前に進みません。

このような違いを鑑みると、やはり日本企業にGEのような評価システムが根づくのはまだまだ先の話になるでしょう。採用に関しても、海外からの刺激を受けてはいるものの、今はまだ試行錯誤している段階で、新しいシステムに移行するには時間がかかりそうです。

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