製紙各社、10年ぶり「新聞用紙値上げ」の覚悟 聖域についにメス、業績不振で「背水の陣」

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価格高騰の主因の1つは、段ボールの原料になる段ボール古紙と同様、中国の製紙会社が日本の新聞古紙を大量に購入しているからだ。新聞古紙は、新聞用紙だけにとどまらず、食品や菓子、ティッシュペーパー、書籍の表紙などに使う「白板紙」の原料になる。中国の需要拡大に伴って輸出価格が上昇し、国内価格も影響を受けている。

さらに大きいのは、日本の新聞古紙は白板紙以外にもさまざまな紙に配合可能で、国内でも新聞用紙以外に使われることが多い。新聞古紙のうち、約7割が新聞用紙原料で、残りは他の紙の原料として使われているという。いわば、新聞古紙は紙の原料として汎用性が高く、使い勝手がいい人気者だ。一方で購読部数は減っており、古紙発生量は減少基調にある。当然のことながら、新聞古紙の価格を押し上げている。

新聞用紙を生産する製紙各社と新聞社との交渉は、2018年春ごろから始まったもようだ。2018年秋の中間決算説明会では、製紙各社首脳は「新聞用紙の原料古紙高騰は深刻」とそろって窮状を吐露した。ある首脳は「印刷用紙より新聞用紙のほうが苦しい。こう言っても、どこの新聞社も書かないが」と訴え、「値上げに向けて動いている」と新聞各社と交渉中であること明らかにした。

段ボール原紙、印刷用紙も値上げ

1月末の日本製紙のリリースは、新聞社への一方的な値上げ通告ではなく、全国紙、地方紙、県紙など、新聞各社との交渉が佳境となった段階で、製紙会社の「覚悟」を見せる意味で行われた、と推測できる。新聞用紙上位各社の値上げ姿勢がそろい、4月からの値上げの確実性が大きく高まっている。

新聞用紙以外では、2018年11月からの値上げを打ち出した段ボール原紙は、2年連続の値上げにもかかわらず、すんなりと浸透した。段ボールは他の多くの品種と異なって、食品や飲料、ネット通信販売向けに需要が伸びているからだ。

一方、国内紙需要の2割強を占める雑誌やカタログ、広告用チラシに使う印刷用紙は1月から20%以上の値上げを各社が表明した。印刷用紙は紙需要減少の主役であり、2017年には半年かけてわずかに値上げに成功したが、価格競争が激しく、値上げ前よりも低い水準まで落ち込んでしまったのだ。

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