製紙各社、10年ぶり「新聞用紙値上げ」の覚悟 聖域についにメス、業績不振で「背水の陣」

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紙需要の減少に加え、原材料の古紙やパルプ、エネルギー代や添加する薬品代、物流費などのコスト上昇が製紙各社の経営を圧迫している。こうした状況下で、長く値段が据え置かれてきた新聞用紙も「聖域」ではなくなったわけだ。

日本製紙の新聞用紙事業の担当幹部は「事業を続けるためには、(新聞各社に)価格改定を受け入れていただかねばならない。われわれの覚悟の表れ」と振り絞るように言葉をつなぐ。

日本製紙の富士工場。背景に富士山が見える(記者撮影)

国内で新聞用紙を生産するのは、日本製紙のほか、王子ホールディングス(HD)傘下の王子製紙、大王製紙、丸住製紙、中越パルプ工業、兵庫製紙の6社に限られている。日本製紙、王子HD、大王製紙、中越パルプ工業は上場会社だが、開示資料で新聞用紙事業を印刷・情報用紙や段ボールなどと一緒の事業セグメントにしており、 新聞用紙事業の損益を開示していない。ただ、新聞購読部数は大きく落ち込んでおり、新聞用紙需要が激減していることは想像に難くない。

新聞用紙はピーク比で3割減

製紙業界首位、王子HDの2018年4~12月期の印刷・情報メディア部門は52億円の営業赤字で、同2位の日本製紙も紙・板紙事業が95億円の営業赤字だ。これらセグメントに含まれる新聞用紙事業もおそらく赤字だろう。その証拠に、日本製紙は新聞用紙事業の固定資産の減損損失126億円を計上。有害物質の処理費用の特別損失を合わせて、2019年3月期は400億円の最終赤字に転落する。国内の紙事業設備を丸ごと減損するのは、あまり例がない。

業界団体である日本製紙連合会によると、2019年の国内の紙総需要は前年比1.3%減、9年連続マイナスの2571万トンと見込まれている。ピークだった2000年に比べると、実に19.6%の減少だ。ピークの2006年に比べると、2018年の新聞用紙は約30%減少した。

需要減とともに新聞用紙を生産する製紙会社を追い詰めているのが、原料になる新聞古紙の価格高騰だ。国内の新聞用紙は、読み終わった後に分別回収される古新聞を主要な原料にしている。この新聞古紙の価格が高騰しているのだ。

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