ECBもハト派に急旋回でユーロ相場はどうなる ドラギECB総裁は「利上げできずに退任」へ
3月7日に開催された政策理事会でECB(欧州中央銀行)はハト派へ急旋回し、為替相場ではユーロが急落している。また、これを受けて始まった翌日の東京市場では円高・株安も進んだ。もちろん、これらの動きには中国の貿易統計悪化も効いている。
今回、ECBが決定したことは主に2つだ。
1つ目は政策金利にかかわるフォワードガイダンスの修正、2つ目はターゲット型長期流動性供給第3弾(TLTRO3)の実施決定である。前者は予想どおり、後者は予想外である。この2点を中心にして現状整理をしてみたい。
なお、会合後の記者会見においては、最初の質問者に対しドラギ総裁が「幅広い説明(a broad account)」と称して、今回の会合のポイントを長々と説明するという場面が見られた。ECBとしても重要な意味合いを持った会合(いわゆるLive meeting)だったことがうかがい知れる一コマだった。
利上げは3カ月の延期で済むのか
まず前者のフォワードガイダンス。これまでは「少なくとも2019年夏までは低金利を維持」という表現が声明文に記載されていた。これは裏を返せば夏が終わる今年9月頃には初回利上げを実施したいとの意思を反映しているといわれてきた。だが、ユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)先物などを見るかぎり、金融市場はこれをまったく信じておらず、そのガイダンスは形骸化した状況が続いており、修正は必至と見られていた。
しかし、である。修正された表現が小刻み過ぎるのではないかというのが筆者の抱いた第一印象である。今回の決定を経てECBは「少なくとも2019年末までは・・・」と低金利据え置きの時間軸を延ばしたが、実質的には9月から12月へわずか3カ月延ばしただけだ。
後述するように、今回はECBスタッフによる経済・物価見通しも大幅に下方修正されており、年内のインフレ率が極めて低い水準(プラス1.2%)に着地することが見通されている。この状況で利上げは難しいと考えるのが妥当だろう。スタッフ見通しと整合的なガイダンスにするのであれば、カレンダーの日付を消して「当面の間(for a while)」などでお茶を濁したほうが後顧の憂いを断つことができたのではないか。
おそらく、「年内」に踏みとどまった背景としては「全会一致にこだわったドラギ総裁がドイツを筆頭とするタカ派を説得するため」という説が濃厚だろう。だが、先行きを考えると、11月1日に就任する新ECB総裁はそのガイダンスの取り扱いに難渋する展開が予想される。10月までにはギリシャやポルトガルの総選挙が想定され、英国のEU離脱(ブレグジット)もどうなっているか分からない。「年内」と区切ったフォワードガイダンスの取り扱いは問題含みだろう。
ちなみに、「年内」の据え置きを約束したことによって、10月いっぱいで退任するドラギ総裁は1度も利上げすることなくその座を去ることが確定したことになる。ドラギ時代は危機対応に終始して幕を閉じる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら