「管理職が偉い」という、できない組織の勘違い 機能で「役割分担」する組織が強くなる

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人材配置のポイント④ サボる社員がいてもいい

アリの世界が典型的ですが、集団が形成されると、2割・6割・2割の割合で3つのグループが形成されると一般には考えられます。いわゆる「2・6・2の法則」です。

学校の遠足で例えると、

上位2割……放っておいてもどんどん歩くグループ
中位6割……普通に歩くグループ
下位2割……チョウを追いかけたり、花を摘みにいったりして集団から遅れるグループ

このように、行動特性や思考特性よって集団は3つに分かれ、職場の組織も同じです。

上位2割……生産性が高いグループ
中位6割……平均的なグループ
下位2割……生産性が低いグループ

この法則で興味深いのは、例えば下位2割を排除すると、中位6割から転落する者が現れて、再び「2・6・2」の割合に戻ることです。上位の2割を排除しても同じです。

組織としての生産性を上げるには、下位の2割の底上げを図るのではなく、上位2割にどんどん仕事を任せることです。いわゆる「パレートの法則」を適用すればいいのです。

「チョウを追いかけたりするのはけしからん」と遅れた2割を個別指導するのではなく、やる気がある上位2割をどんどん先に歩かせる。すると、中位6割は、置いていかれまいとしてスピードを上げて歩き出し、残り2割も、姿が見えなくなると不安になって動き出します。

また、動物学的にみると、下位の2割を遊ばせておくことが必要です。そうしないと、非常事態が発生して人手が必要なとき、対応できません。

上位2割の部下をいかに味方につけるかがカギ

全員に能力を100%発揮させて仕事を行わせることはできません。仕事が2倍できる部下には、2倍の仕事を割り当てる。仕事が半分しかできない社員には、半分の仕事を割り当てる。

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カギはトップ層2割の働かせ方にあります。2・6・2の法則が正しいとしたら、上司の言うことを聞かない2割が存在する組織のほうが、むしろ健全です。

2・6・2の法則を前提にすると、まず上司が考えるべきは、「一生懸命、仕事をする上位2割の部下を味方につけること」です。そして、中位6割のうち、半分くらいの部下から信頼を得ることができれば、全体の5割を押さえたことになります。

集団のイニシアティブ(主導権)を取るうえで間違いやすいのは、「こんなに自分が頑張っているのに、なぜ部下はついてきてくれないのか」と考えることです。5割、6割の部下を押さえることができれば、十分と思っていいでしょう。

20世紀の歴史で、全員をついてこさせたのは少数の独裁者だけです。そんな上司にはなりたくないでしょう。2割くらいが横を向いているのであれば、「ウチの組織は正常でよかった」と、むしろ喜ぶべきなのです。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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