ウルトラセブン「ポインター号」造った男の情熱 全国を疾走し「ロマンスカーと撮影」も実現

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とはいえ、普通の会社員がポインター号を維持するのはなかなか厳しいらしい。城井さんも以前は普通の特撮ファンと同じように、模型を集めたりもしていたが、今は資金的に難しい。以前のコレクションはポインター号の修理代を捻出するために売却してしまった。「模型趣味の究極は“1分の1”。それに手を出したらどうなるか。その見本が私です」。

さて、冒頭のロマンスカーとのコラボに話を戻す。あるイベントで、鉄道に詳しいウルトラセブンのファンと知り合い、小田急とコラボしたら面白いという話で盛り上がった。その夜、小田急の車内で「ロマンスカーLSE、ラストラン」と見た。

LSEとの撮影時には、最新型のロマンスカーGSEとも並んだ(撮影:Tanaka)

カラーリングがNSEと似ているLSEといっしょに写真を撮れば、当時の雰囲気が出るはず。しかし、決して鉄道ファンではない城井さんは、いつ、どこで写真を撮ったらいいのかがわからない。あのとき、ロマンスカーといっしょに写真を撮る計画をもっと進めておけばよかったと後悔した。

そんな矢先、そのファンからメッセージが届いた。なんという偶然、早速、その人にスケジュールを組んでもらい、無事撮影を終えることができた。ちなみに、「遠足は家に帰るまでが遠足」という。この日は帰宅途中に首都高速で渋滞に巻き込まれたものの、故障せず無事に帰宅できたという。

動く限り走らせ続ける

今後のポインター号はどうなるのだろうか。「もちろん動く限り走らせ続けます」と、城井さんは力強く語る。現在の資金力では走れるようにするだけで精いっぱい。「内装がぼろぼろなんです」。ポインター号に乗った子どもに夢を持ってもらうために、内装を少しずつきれいにしたいというのが城井さんの夢だ。

最近はウルトラセブンを知らない若い世代も増えてきた。ポインター号を見て、「格好いい。でもこれ何の番組に出てくるの?」と聞く子どももいるという。ウルトラセブンがドラマの裏側で発信するメッセージは、人類への警鐘として今なお心に響く。次代の日本を背負う世代にもぜひウルトラセブンを知ってほしい。

「最初は2~3年で手放すつもりでした」。でもポインター号を通じて多くの人と出会うことができました」。27年たった今も城井さんの愛車だ。これまでに費やした金額を合計すれば、きっとフェラーリのようなスーパーカーだって買えるだろう。でも、たとえ故障が多くても世界に1台しかないポインター号のほうが多くの人に夢と希望を与えるはずだ。多くの仲間や同好の士に支えられて、ポインター号は今日も走り続ける。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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