ウルトラセブン「ポインター号」造った男の情熱 全国を疾走し「ロマンスカーと撮影」も実現
試行錯誤の結果、修理が終わり、車検が通った。完成したのは1992年。ウルトラセブンでポインター号を製造した当時のスタッフに見てもらったら「うん、こんな感じです」。ポインター号を最も知り尽くした人から、お墨付きを得た。
車検が通ったといっても、それからがまた大変だった。走るたびにどこかが故障する。そのたびに修理代がかかる。燃費も悪くリッター2~3kmだ。ガソリンタンクに穴があいていてガソリンを50リットルくらいしか入れられない。100km走るごとにガソリンを入れ直す必要がある。修理費、維持費、トータルでいくらかかっているのかという問いに、城井さんは「怖くて計算していません」と苦笑した。
出会いを生むポインター号
でも、いいこともあった。公道デビューからおよそ10年後の2003年にエンジンも載せ替える大修理を行った。でもおカネがない。すると、アンヌ隊員を演じた女優のひし美ゆり子さんがパーティを開いてくれて、集まった参加費の一部を修理費として提供してもらった。
車検のときは、整備士さんがどうすれば車検を通るかをいっしょに考えてくれた。ウルトラセブンを見て大人になった整備士さん。ポインター号の車検を通してあげたいと思う気持ちはよくわかる。
ポインター号で神戸の街を走っていたら、警察官に呼び止められた。「そのクルマは車検を通っているのか」と問いつめられるのではないか。不安に感じた城井さんに警察官が放った一言は「キングジョーが出現したのですか?」。ウルトラセブンのファンだけに通じる一流のジョークだ。当然ながら、城井さんもこう応えた。「いえ、パトロール中です」
ひし美ゆり子さんだけでなく、モロボシ・ダン隊員役の森次晃嗣さんなど、子どものころに憧れた多くのウルトラセブン関係者の知遇を得た。そして、整備士さんや警察官など市井のウルトラセブンファンとの出会いも大きな財産だ。しかし、城井さんにとって、ポインター号がもたらした最大の出会いは奥様だ。
1995年にあるイベントに参加したときのこと。コンパニオンを引き受けてくれる女性が1日だけ参加できず、代役として彼女の妹が参加した。その人が城井さんの奥様である。ポインター号が結んだ縁。だから、ポインター号の保有は奥様公認だ。ポインター号の維持に伴う多額の出費についても、奥様は「生活できなくなったらやめてね」と言うのみ。理解がある奥様だ。
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