麻生、二階、菅、「安倍政権3本柱」にあつれき 「ポスト安倍」で3実力者の権力闘争に火ぶた

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こうした3氏の言動やあつれきが永田町の耳目を集めるのは「3人の実力者の主導権争い」(細田派幹部)との見方が多いからだ。3氏の首相との距離は三者三様だ。麻生氏は首相の長年の盟友で後見人も自認し、「首相の精神安定剤」と呼ばれている。二階氏は首相と主義主張が異なるが、「首相を支持することで党内影響力を拡大している」(自民幹部)ことに加え、「剛腕だけに首相も切るに切れない関係」(同)とみられている。無派閥の菅氏は第1次政権以来、重要閣僚などで首相を支え続け、「人事などで辣腕を振るい、霞が関を支配する官邸主導の張本人」(財務省幹部)との評がもっぱらだ。

政界では「敵の敵は味方」「昨日の敵は今日の友」が常識で、とくに派閥領袖など実力者の人間関係は「めまぐるしく変化するのが当たり前」(自民長老)とされる。3氏もこれまでの政局で対立と連携を繰り返してきたが、第2次安倍政権発足以降は、首相支持を前提に協力することで、それぞれの立場を強めてきた。自民党内では「昨年9月の総裁3選で首相の任期が区切られたことで、麻生氏ら実力者3氏の主導権争いが始まった」(自民幹部)と解説する向きが多い。

狙いはキングメーカー

二階氏80歳、麻生氏78歳、菅氏70歳と、3氏とも首相(64歳)よりかなり年上だ。ただ、麻生氏は副総理兼財務相に就任した際、側近に「首相が突然退陣したら受け皿になる」と胸を張ったとされる。また、二階氏も第2次政権発足の段階では「機会があれば総裁選に挑戦も」と意欲も見せた。一方菅氏は、岸田氏、石破茂元幹事長、加藤勝信総務会長と並んで一部メディアで「岸(岸田)破(石破)義(菅)信(加藤)」などと紹介されるなど、ポスト安倍の一角に名が挙がっている。ただ、現状では「3氏の共通項はポスト安倍でのキングメーカー狙い」(自民長老)との見方が支配的だ。

首相側近の加藤勝信総務会長は27日の講演で「国民から『さらに』という声が出てくれば、そうした状況が生まれるかもしれない」と首相の総裁4選論にも触れた。これは2月10日の自民党大会後に二階氏が「4選」に言及したことを踏まえたものだ。首相は「次はない」と笑って否定するが、「これもポスト安倍での神経戦の一環」(首相経験者)とみる向きが多い。ただ、麻生氏ら3氏のあつれきが深まれば、現在の安倍1強体制も揺らぐだけに、参院選後の党・内閣人事も含めて首相の頭痛の種ともなりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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