入居希望者が続々集まる「茶山台団地」のすごみ DIY工房やニコイチ住戸で若年層を惹きつける

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空家増加の社会問題化を背景に、国土交通省は2013年度に賃貸住宅の流通を活性化させるために、借主が自費で改修できる「借主負担 DIY型賃貸借」のガイドラインを示している。以降、この制度を利用した賃貸住戸は全国的に徐々に広まりつつある。

大阪府住宅供給公社による団地カスタマイズ制度もこれを利用したもので、所有する約2万2000戸(130団地)のうち半数以上の約1万2000戸(47団地)で展開し、2年間で225件の申し込み(2019年2月1日時点)があったとしている。

申込者のうち20~30歳代が46%

申込者のうち20~30歳代で46%(40歳代までを含めると74%)に達し、若い世代による人気が高いことがわかる。この結果、最近5年間の入居者については全体の54%を20~40歳代が占めているという。

入居者全体の年齢層は50歳以上が53%(65歳以上は37%)を占めているが、諸施策により、年齢層は徐々に低下しつつあるわけだ。

このように書くと、茶山台団地の再生は順調に進んでいるように感じられるが、当然ながらことはそれほど単純ではない。中でも、高齢入居者への対策は大きな課題だ。

そのため、茶山台団地では、ここ数年でいくつかの対処策を展開している。その1つが昨年11月にオープンした「丘の上の惣菜屋さん『やまわけキッチン』」だ。NPOと連携し、団地の住戸をお惣菜の販売と食事スペースとして活用しているものだ。

高齢入居者の利用も多い「やまわけキッチン」の様子(筆者撮影)

近隣のスーパーが閉店したことから、高齢者の買い物支援と孤食の防止を目的にスタートしたものだが、今では子育て世帯も含め、地域のコミュニティースペースとして機能している。取材当日も、高齢者と若い家族連れのグループが半々といった感じでにぎわっていた。

ある高齢の女性は、「私は1人暮らしですが、ここがオープン日(月、火、金、土)はご近所のお友達とここで待ち合わせして食事をするのを楽しみにしています」と話していた。

このほか、集会所を活用した多世代交流スペース「茶山台としょかん」、地元の医療機関や帝塚山学院大学と連携した「まちかど保健室」、青果の移動販売「ちゃやマルシェ」といった、高齢者の生活・健康改善、コミュニティー育成の取り組みも行っている。

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