今年の「税制改正」がサラリーマンに厳しいワケ 税制面にも"働き方改革"の余波が

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今のところ基礎控除の額は一律で38万円ですが、2020年から48万円に引き上げられます。つまり、その分、所得税の支払いが少なくなるということです(ただし、年間の合計所得が2400万円を超える人は、基礎控除の額が所得に応じて逓減してしまいます)。

基礎控除は誰でも使えるので、フリーランサーも対象になりますし、もちろんサラリーマンも対象になります。それではどうして、この改正が「フリーで働く人に有利な税制」といわれるのでしょうか。

これまで、「所得」という言葉を使ってきましたが、そもそも所得とは何でしょうか? 所得と似た言葉に「収入」という言葉がありますが、所得と収入はまったく違うものです。

ざっくり言うと、収入は「稼いだお金のすべて」、所得とは「収入から経費を引いた金額」です。

例えば、個人で文房具店を経営している場合、年間の売り上げが1000万円あっても、その全額に課税されたら仕入れもままならなくなってしまうかもしれません。そのため、仕入れ額や人件費などを経費として差し引いた「所得」を所得税などの税金の対象としているのです。

会社に所属せずフリーランスで仕事をしている場合、収入を「事業所得」として確定申告する人が多いでしょう。その場合でも、収入を得るために支出した金額を経費として事業所得の額を計算することができます。

給料やボーナスが給与収入となるサラリーマンの場合は、経費を計算するのが難しいため、収入の額に応じた一定の給与所得控除額を経費とみなして収入から差し引きます。

サラリーマンはどうなる?

このように、所得税を計算する際は、収入から経費を差し引いて所得を算出し、そこからさらに所得控除を差し引くことができます。先述したように今後は基礎控除が10万円増えますので、その分、支払う所得税の額が少なくなるということですが、税を徴収する側から見ると税収が減少してしまう結果になります。そこで、税収を減らさないためのカラクリがあるわけです。

サラリーマンは、給与所得を計算する際に、給与収入から給与所得控除額を差し引きますが、2020年の所得税から、この給与所得控除額が一律10万円引き下げられます。つまり、サラリーマンの場合、基礎控除が10万円増えて、経費が10万円減るので、差し引きゼロで所得税の額は変わりません。

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