エスカレーターを歩く人にも「言い分」はある

定着したものをやめるのは容易ではない

エスカレーターをめぐる問題には「危ないはずがない」という意識が奥底にある(写真:bee/PIXTA)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2019年4月号「エスカレーターを、信じてる」を再構成した記事を掲載します。(文:鍋倉紀子)

エスカレーターの片側空けは歩く人だけでなく立つ人にとっても危険であるし、反対側の手すりを持ちたい人や子ども連れ、キャリーケースがある人には不便である。機械の耐久性にも支障を来す恐れがあるということで都心部や地方の駅で注意表示を出すところが増えている。

JR東京駅では期間限定で啓蒙キャンペーンが始まった。禁止とまではいかない、正しいエスカレーターの乗り方的な言い回しと駅係員による誘導である。しかしなかなか周知徹底には至らない。なにしろ関西圏でほぼ半世紀、それ以外の地域でも20年近くやってきたことである。最初はマナーとして外に倣って始めたことでも習慣としてすっかり定着したものをやめさせるのは容易なことではない。

エスカレーターを歩く人にも言い分はある

建築基準法によると通常のエスカレーターは勾配30度以下、段差20~23cm、幅1.1mで分速30mとされている。同じく段差18cm以下、幅1.4m以上と定められている公共施設の階段より幅は狭く段差は大きい。

だから、階段より「手すりにつかまらず歩いたり走ったりしては危ない」つくりになっている。しかしその速度は人が普通に階段を上り下りする速度よりやや遅いため急いでいる人がじっと乗っているとイライラしてしまう。走るのは論外としても近くに階段がなかったらエスカレーターを歩く以外どうしようもないだろうというのが歩く側の言い分だ。

楽に行きたい人は傍らに立ち、急ぎの人は傍らに通すという片側空けの大義名分が十分通用してきたラッシュアワーのターミナル駅だけでなく、まったくその必要性がないすいた地方の駅やデパートなどでも普通に見かけるこの風景、自動車産業の戦後需要の拡大とともに黄金期を迎えたイギリスで生産性拡大・効率性重視の社会風潮から工場で製品を作り上げていく過程同様、駅のエスカレーターで大量の人を効率よくさばく手段として登場したとされている。

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