爆売れ「ポケトーク」生んだ英語オタク社長の夢 シリコンバレーに移住し、世界企業を目指す

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――どのように使えばよいのでしょうか。

言語を学ぶとき、日本では、1つ1つ構文と単語を覚えて、言いたいことに応じてそれぞれのパーツを組み替える学習方法を取ることが多い。しかし、これでは話せるようになるのは結構大変だ。英語がある程度できる人でも、「いま100億円払ってくれれば20%割引します」と言いたいときに、100億円をパッと“ten billion yen”と言い換えるのはなかなか難しいでしょう?それよりは、まるごと1文暗記してしまうのが手っ取り早い。

一番いいのは、バイリンガルの人に「これを伝えたいんだけど、何ていうの?」と聞き、その答えを何度も口に出して覚えること。語学教室に通っていたとしても、そんな贅沢な環境はなかなかないだろう。しかし、ポケトークならそれができる。さらに、2代目からは、端末の画面上に日本語とその翻訳文が両方表示できるようになり、端末上にも最大1万回の会話を履歴として残せる。これを見返すだけでも、すごく勉強になる。

――英語の勉強法に随分こだわりを持っているのですね。

英語の勉強はかなりやってきたほうだ。20歳までまったく英語が話せなかったが、21歳で一念発起し、英会話学校に通いはじめた。そこから猛烈に勉強して、TOEIC900点を取り、IBMに就職した。TOEICはこれまで11~12回は受けたんじゃないかな。今でも、英語で「あ、こういう言い回しがあるんだ」と思ったら、毎回覚えるようにしている。それでも、英語は絶対完璧にならない。

英語が苦手な日本人は損をしている

日本人は英語ができないことですごく損をしている。平成の間、日本はグローバル化で確実に遅れを取ったが、その理由の1つは言葉の壁があったことだ。その問題を少しでも解消するために、当社は創業当時から英語学習ソフトを大量に出してきた。最近でも、映画の字幕で日本語と英語を両方見られる「超字幕」を発売したり、語学学習ソフトの「ロゼッタストーン」の発売元を買収した。ポケトークも多少なりとも役に立つなら、社会的意義がすごくあることだと思う。

――ただ、これまでのソフトと違い、ポケトークはハードウエアです。販売する上で、ずいぶんと勝手が違ったのでは?

もちろん高いハードルだった。とくに大変だったのは納期の調整。製品の売れ行きに在庫の補充が追いつかず、店頭在庫がなくなってしまったこともあった。それも、1年続けてきたことで生産のリードタイムの読み方などは学習できてきた。

もっとも、ポケトークのキモは、ものすごく複雑なプログラムで書かれたソフトの性能なわけで、ソフト屋さんがハードに参入したというよりは、ソフトから「ソフト+ハード」に広がった、というのが正しい。

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