デスノートを書く連中を毎回打ち負かしてきた--クレイグ・マンディ最高研究戦略責任者《特集マイクロソフト》

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デスノートを書く連中を毎回打ち負かしてきた--クレイグ・マンディ最高研究戦略責任者《特集マイクロソフト》

グーグルなどへ対抗する独自のクラウド戦略「ウィンドウズアジュール」を発表したマイクロソフト。その背後ではさらに「その先」を見据えた研究が着々と進んでいる。マイクロソフトが描く未来のコンピューティングは世界をどこへ導くのか。ビル・ゲイツ氏の役割の一部を承継した最高研究戦略責任者のクレイグ・マンディ氏に聞いた。

--マイクロソフトが目指す未来のコンピューティングとはどのようなものでしょうか。

まず足元を見てみましょう。インターネットが爆発的に普及した理由は、電子メール、ブラウザという二つのキラーアプリがあったからです。この二つが確立したことにより、人々はインターネットコンポーネント側にプログラミング能力を付加することを考え始めました。

次世代アプリでは、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に加え、言語認識など普段私たちが使っているナチュラルユーザーインターフェースを実現できるようになるだろう。ここで問題になるのは、どのように次世代アプリを実現するか。ネットだけでは無理で、クライアント側の進化も不可欠です。今はウェブアプリとクライアントソフトが別々にプログラミングされているが、将来は複合したプラットフォームになる必要がある。

--パソコンも進化を続ける。

クライアントとはパソコンだけを指しているのではありません。携帯電話、ゲーム、テレビなどすべて含めた形でエコシステム(生態系)を形成しつつあるのです。今後はこうしたすべての側面に対しての新しいアーキテクチャ(基本設計)を考えていく必要がある。

新しいクライアント環境の実現が、より高いコンピューティングレベルへ導くカギになる。つまり、「クラウド側でコンピューティングを行うのだから、クライアントはそれを表示するだけでいい」という考え方は間違っている。すべてが一緒に進化するのであって、それを実現するための投資を行っているのはマイクロソフトだけです。

「ウィンドウズアジュール」はこうした長期的なビジョンへの布石です。アジュールを使うと、プログラミング可能なウェブサービスやインフラサービスを単一システムとして提供できるのです。

--しかし、「マイクロソフトを使わない」という選択肢も現れ始めています。

これまでも多くの連中がマイクロソフトの名前を「デスノート」に書こうと考え、攻撃を仕掛けてきました。長い歴史を振り返ると、数年ごとに新しいエキサイティングな会社に直面しています。そうした会社へのマイクロソフトの対応能力や競争力が、多くの人に過小評価されているのではないでしょうか。

マイクロソフトには研究に対し長期的なコミットメントがあり、巨大な規模で研究開発を行っている。研究に力を入れる理由は三つあって、一つはつねに自社の製品を改善するため。つねに新しいものを出していれば、競合が新製品を出しても、その競合製品はマイクロソフトの古いバージョンと競争しているような状況になる。二つ目は、つねに新しい発明で市場をいい意味で揺るがすためだ。最近の例では医療分野。人々の健康や医療システムをサポートしようと、さまざまな技術を研究しており、すでに業界の仕組みに変化をもたらすのではないかともいわれている。三つ目はレスポンス力の向上。私たちの研究規模、人材を生かせば、タイムリーに世の中からのニーズに対応できます。

今後3~5年後、(インテルなどが製造する)マイクロプロセッサはシングルコア、マルチコアから、多くのコア(メニーコア)を用いた次世代のものにシフトしていく。そうなると、当然プログラミング用の基本設計技術も必要になるが、マイクロソフトはすでにこの変化をサポートし、商用化でリードしている。「ウィンドウズ7」はメニーコアプロセッシングへの準備としてつくられたOSです。

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