チョコの「口溶け感」を演出する陰の名脇役企業 業務用チョコ世界3位、不二製油の世界戦略

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不二製油の製品は油脂だけではない。ドーナツやアイスクリームなどに使われる業務用チョコレートも手掛けている。チョコレートドーナツやチョコレートアイスクリームを製造する企業へ、業務用として卸している。

この業務用チョコレートの分野で不二製油は大きな一歩を踏み出した。今年1月に637億円を投じてアメリカ・ブロマー社の買収を完了し、業務用チョコレートの世界3位に躍り出たのだ。これにより北米という世界最大のチョコマーケットでも規模拡大を図る。

不二製油の業務用チョコレートは納入先のケーキ店などが使いやすいよう、高級感あるパッケージで包装している(記者撮影)

買収後、同社のチョコレート製造拠点は世界10カ国16カ所に拡大する。だが、同社が設立されたのは1950年と油脂メーカーとしては後発組だ。第2次世界大戦後の食糧統制下で油脂原料の割り当てを受けられず、マレーシアなど南方に活路を見いだした。そこでつくられるパーム(植物のヤシ)を調達し、パーム油の製造を始めたのだ。

健康にやさしいチョコも開発

パーム油は当時、日本では主流ではなかった。パーム油を日本で売り込むには、独自の特長を訴求しなければならない。そのための技術開発に力を注ぐことが不二製油のDNA(遺伝子)となった。パーム油は通常、固形と液状の油脂成分が混在している。これを分別する技術の工業化と製品化に日本で初めて成功。多彩な機能を持つチョコレート用油脂を製造できるようになった。

現在、力を入れているのが健康ニーズを捉えた商品開発だ。これまでのチョコレートは、食べると太るなど不健康なイメージが根強くあった。だが、10年ほど前からチョコレートに含まれるカカオポリフェノールが注目され、健康機能に光が当たっている。

不二製油は砂糖不使用のシュガーレスチョコレート「ノワール サンシュクレ」を開発。砂糖の代わりに糖アルコールを使用するため、食後血糖値の上昇を示す指標GI(グラッセミック・インデックス)が32に抑えられている。55以下の低GI食品は肥満などのリスクを低減させる食品として注目されている。

サンシュクレの開発を担った同社の小田剛己チョコレート開発室長は「チョコレートの味について、消費者の多くが感じる認識を外れてしまうと、おいしくないと感じるチョコレートになってしまう。砂糖を使わず甘みが減った分、カカオの配合を調整し、おいしいチョコレートづくりにこだわった」と強調する。ちなみに、サンシュクレの一般消費者向け販売は行っていないが、楽天市場などのネット通販を通じて購入できる。

「ケーキに入れたり、加工したりするチョコレートとして気に入って何回か購入しています」とは、ネット通販での女性ユーザーの評価。健康意識がますます高まる現代。おいしい健康チョコレート市場の拡大が、不二製油の成長を下支えしそうだ。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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