東海道線「村岡新駅」構想、藤沢ー大船間に浮上 損得勘定は?土壌から防災まで課題も山積

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深沢の開発を進めたい鎌倉市にとっては、県のリーダーシップで膠着していた開発の話をまとめてくれるのは渡りに船だったと思われる。深沢の街づくりコンセプトを「ウェルネス スクエア」とし、医療・福祉等の施設を誘致しようとする鎌倉市と知事の政策も親和性がある。またJRにとって、新駅設置は採算に見合うか否かの判断によるだろうが、塩漬けになっている土地を早く売りたいのは間違いない。

深沢の開発予定エリア。鎌倉市は「ウェルネス」をコンセプトに街づくりを計画。市役所本庁舎を移転する計画もあるが、反対意見もあり不透明だ(筆者撮影)

さらに、湘南研究所の研究員の大規模なリストラを進めるとともに、研究所の一部を外部に開放し、今後、ベンチャー、スタートアップを含む200社を誘致する予定という武田薬品にとっては、集客に当たって新駅は喉から手が出るほど欲しい。

そこで、4月の知事選に3選出場を表明した黒岩知事が、開発の恩恵が少なく、本音を言えば駅を造りたくない藤沢市を説得するなど各プレイヤーの利害を調整し、”実績”を作ったというのが今回の話ではないか。

ちなみに、今年1月、鎌倉の副市長に就任した千田勝一郎氏は、過去に菅義偉官房長官の秘書を務め、2011年からは黒岩知事の特別秘書を務めてきた人物だ。千田氏は村岡新駅・深沢開発に関して「知事の特命を帯びている」という話も聞く。また、今回の調整がスムーズに進んだのは、黒岩知事を支える菅官房長官の力もあるのではないか。

財源不足が課題に

こうした新駅および周辺開発計画について、地元である藤沢・鎌倉には、具体的にはどのような声があるのだろうか。まず藤沢市側に関しては、市議会で「事業費の著しい増大、財政が急激に悪化した場合など、事業環境が変化すれば駅の整備はゼロベースで見直す」と副市長が答弁するなど、少なくとも「何が何でもやり遂げよう」という空気感は見て取れない。

藤沢市の中期財政の見通しとしては、2019年度からの5年間に約584億円の財源不足が生じる見込みとなっており、厳しい財政運営が求められている。こうした状況に鑑みれば「ゼロベースでの見直し」も、まったくありえない話ではない。

一方の鎌倉市の状況はどうか。鎌倉市議の長嶋竜弘氏によれば、「議会の賛成派と慎重派の割合は、14対10」という。長嶋氏は安易に計画を進めるべきではないという慎重派の立場を取る。

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