東海道線「村岡新駅」構想、藤沢ー大船間に浮上 損得勘定は?土壌から防災まで課題も山積
その理由としては、まず駅設置の効果に疑問があるという。新駅の1日あたり乗降客数は約6万5800人で、このうち、大船駅、藤沢駅、湘南深沢駅利用者の新駅利用の潜在需要が約3万5200人、周辺エリアの開発による新たな鉄道利用者の発生が3万0600人と試算されている。
しかし、この数字には「鵠沼(くげぬま)など、およそ新駅を利用するとは思えないエリアの住民もカウントされており、過大な数字といわざるをえない」(長嶋氏)という。また、「仮に数万人の新規利用者が見込まれるなら、ラッシュ時の東海道線の混雑に拍車がかかることになる。しかし、朝のピーク時はこれ以上本数を増やせない過密ダイヤがすでに組まれている」と指摘する。むしろ、「新駅を設置するなら、大船駅から根岸線を延伸し、輸送のパイプを太くするほうが利用者にとってもJRにとってもメリットがあるのではないか」という。
液状化が懸念される場所も
また、深沢エリアの開発については、「少子高齢化の時代に、バブル期のような街の開発をする意味があるのか。鎌倉はゴミ焼却施設や市役所本庁舎の移転・建て替え、老朽化した学校の建て替え等の問題も抱えている」と、財政面から開発計画そのものへの疑問を投げかける。
長嶋氏が、最も懸念するのが深沢の土質と防災対策の観点だ。まず、深沢の開発地は全体的に地盤が緩い。2015年にエリア内6カ所で実施したボーリング調査の結果によれば、おおむね30m以上杭を打たなければ支持層に届かないことがわかり、施設の建設コストが跳ね上がる可能性がある。また、一部には液状化の危険性が指摘されている場所もある。
さらに、柏尾川周辺は県が告示する洪水浸水想定区域に指定されており、過去にもたびたび浸水被害が発生してきた。上流の横浜市栄区金井地区で新しい遊水地の整備が進められる計画があるものの、現状、治水対策は万全とはいえない。長嶋氏は、「豪雨災害が懸念される今、このエリアに新たに街をつくるのは防災の観点から間違っている。境川沿いの遊水池公園(横浜市泉区)のように、グラウンドなどとして整備するほうが理にかなっている」と語る。
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