ねとらぼ「月間1.8億PV」を生む現場の熱い裏側 漫画村の調査報道はいかにして生まれたのか
――「ねとらぼ」では時に、特定のテーマをジャーナリスティックに深掘りすることがあります。昨年はやはり、「漫画村」問題に関する一連のシリーズ記事が印象的でした。これはどういう経緯で始まった企画だったのでしょうか。
「ねとらぼ」では以前から、アドネットワークに注目していました。私たちも含めてネットメディアの多くはこのアドネットワークからの収益に頼らざるを得ないわけですが、「漫画村」の登場以前から海賊版サイトでアクセスを集め、広告収入を得るサイトが散見されました。そこに広告を掲載しているのはどのような企業なのか、興味があったんです。
そういった海賊版サイトに広告を流す代理店を独自に調べていたのですが、同じ手口を模倣する業者が出てくることを懸念して記事化は控えていたのです。しかし「漫画村」問題で、政府から特定サイトのISP(インターネットサービスプロバイダ)に対してブロッキング要請できる制度を検討し始めたタイミングで、編集部でも記事掲載のゴーサインを出しました。
個性豊かなライター陣はどう集まったのか?
――つまり、「漫画村」の問題が明るみに出る前から、海賊版サイトの問題点を指摘する取材を進めていた、と。
そうですね。「漫画村」はきっかけの1つに過ぎません。それまでに複数のスタッフで集めていた情報を一気にまとめた形です。1本目の記事を配信する前から、ある程度シリーズで展開することは決めていました。われわれとしてはずっと取り組んできたこの問題が、これほど大きな反響を得たことにちょっと驚いています。
――なるほど。あらためて「ねとらぼ」ライター陣のパワーを感じさせますが、ライターの採用はどのように行っているのでしょうか?
それは本当にばらばらなんですよ。内部の編集記者は外注していたライターに入ってもらうケースが多いのですが、そもそもうちは報道出身者が皆無なんです。前職もフリーターや構成作家、あるいは不動産屋や質屋、高校教師、ギャンブラー等々、本当に多種多様です。
ゲームの「三国志」に例えて言えば、「ねとらぼ」は新規の君主が空白地に立ち上げた新しい国のようなものです。新興国だから、その辺を通りがかった在野の武将を片っ端からスカウトした。こちらとしては、「こんな新興国に来てくれるなら全員受け入れよう!」というスタンスです。すると面白いもので、なかには張飛や趙雲のように突出したスキルを持った人材がちゃんといるんですよね(笑)。
――その結果としてこれほど大きなメディアになったわけですが、報道未経験の人材には何か特別な研修や育成も?
いえ、特別なことはしていません。下手な研修をするよりも、現場を踏んでもらったほうが学びは多いですから。それぞれが実践を重ねながら、ネットメディアならではの手法を身に着けてもらう方針でやってきた結果、独自進化を遂げてきた側面はあるかもしれません。