ねとらぼ「月間1.8億PV」を生む現場の熱い裏側

漫画村の調査報道はいかにして生まれたのか

――そのためなのか、「ねとらぼ」の特徴の1つは、記事の多様性にあると思います。あらためて配信されている記事を一覧すると、扱うジャンルが非常に多岐にわたっていることに驚かされます。

「ねとらぼ」のスタンスを語る編集長の加藤さん(写真:news HACK by Yahoo!ニュース)

掲載するジャンルに特に制限は設けておらず、できることは何でもやろうというスタンスです。ただ、できないこともたくさんあるのが現実ですね。例えば、他のネットメディアと同様に、記者クラブには入れてもらえないので、役所から降りてくるネタをストレートニュースとして扱うのは難しい。もし取り上げるとすれば、SNS上のコメントに注目するなど、何らかの「からめ手」を考えるしかありません。

――なるほど。そういう編集側の工夫がされた記事は、どういう読者に向けて発信しているのでしょうか?

ネットに触れている老若男女です。最近は「ねとらぼ」だから読むという人よりも、SNSのタイムラインで目に入ったタイトルをなんとなくクリックしている読者が大半でしょう。そうして“つまみ読み”をしていたらたまたま「ねとらぼ」の記事だった、でいいのではないかと思っています。問題はその機会をいかに増やすかで、記事をなるべく多く出すのもそうした戦略の一環です。

――では、掲載記事はどのように決定しているのでしょうか。企画会議は定期的に行われていますか?

いえ、実は定例会議はやっていないんです。制作スタッフ同士で常にオンライン上でやりとりをしていますから、そこで適宜、時事ネタについて議論しています。挙がってきた情報で良さそうなものがあると、デスク担当がその都度、記事にするかどうかを判断します。そのためスタッフ同士のたわいもない雑談から記事が生まれることも少なくありません。

ちなみに体制としては現在、編集記者が21人。このほか、定期的にお願いしている外部のライターが30人前後います。人が増えればそれだけ情報をキャッチするアンテナが増えますから、それぞれの守備範囲を頼りにしながら、できるだけ多くのライターの力を借りたいと考えています。

人の役に立つ記事かどうか

――さまざまなネタが提案される中で、企画の採用基準は何でしょう?

端的に言えば、それが人の役に立つかどうかに尽きます。この場合の「役に立つ」は、高尚な知識じゃなくていいんです。「かわいい」でも「癒やされる」でも「くだらない」でもなんでも。

毎日30本くらいの記事を出しているとはいえ、なかにはどうしても落とさざるを得ない企画もあります。そこで優先されるのは、読者にとって実用的であるかどうか、楽しいものであるかどうかといった点です。

さらに、私は書き手の熱意も大切な要素だと思っています。自分の好きなテーマをこの世に示したいという思いは、例えPVが期待できないネタであっても、一部の層に深く刺さるものであれば大事にしたい。そもそも、最初から反響を見込んだ記事でも、狙い通りにバズるとは限らないですからね。

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