年間1000億円も電気料金へ不当に上乗せか 再生可能エネルギー賦課金を巡る不可解
東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授は、こうした問題点をFIT導入前から再三指摘してきた。今年9月の経産省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会でも、「現在の回避可能原価(費用)は、どう考えても調整しないはずの電源も含めた全電源の可変費用(燃料費などの運転費用)で計算されており、明らかに過小(賦課金は過大)」と述べ、将来、再エネ普及とともに賦課金総額が拡大するにつれ「相当大きな問題になる」と懸念を示した。そして、石油、ガス、石炭を合わせた火力発電の平均値を使うほうが現行制度よりはるかに正しい推計だと主張している。
また、自然エネルギー財団(孫正義・ソフトバンク社長が設立者・会長)の木村啓二・上級研究員らも同様の問題点を指摘。回避可能費用を計算するベースとして、電源の中で最も高い石油火力の燃料費単価(電力6社平均)と、時間帯ごとの電力需給で決まる卸電力市場価格(12年度の24時間平均値)を使った場合の賦課金を試算した。
その結果、石油火力の燃料費単価を使った場合、賦課金は全電源平均値ベースと比べ1400億円近く縮小。卸電力価格を用いた場合も約1100億円圧縮された。
松村教授が代替案とする火力平均を使った場合でも、賦課金は数百億円縮小されると見られる。つまり、現状は利用者負担が数百億円から1000億円以上も過大に膨らんでいる可能性がある。
最近では自民党の行政改革推進本部無駄撲滅プロジェクトチームでもこの問題を取り上げている。座長の河野太郎・副幹事長は、「そもそも回避可能原価の計算に全停止している原発のコストを算入するのは無理がある。消費者の負担で電力会社がコスト以上の収入を得ている」と批判、今後も正しい賦課金の計算について議論を続ける意向だ。
経産省は「見直しを含め検討する」と言うが・・・
これに対し計算方法を決めた経産省側は、「再エネ導入によって調整される電源は実測不可能。必ずしも石油火力から調整しない」「石油火力は夜間など需要低下時には用いられない場合もあり、時間帯によっては代表性に欠ける」「卸電力価格は国内市場がまだ規模が小さく、電力会社による価格操作の懸念すらある。採用しているドイツでも乱高下が問題になっている」などと反論する。ただ、現状がベストとも言っておらず、「より実態に近づく方法はないのか、現行制度の見直しを含めて検討する」との姿勢だ。
重要なのは、この問題をよりオープンかつ本格的に議論することだ。今後、FITによる再エネの運転開始は加速度的に進む見通し。それにつれて賦課金も毎年1000億円単位で拡大していく。電気料金を通じて再エネを支えている利用者全員が納得できるように、早期の制度設計見直しが求められる。
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