細野元環境相の二階派入りにブーイングの嵐 非自民のスター、「寄らば大樹」戦略の成否

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しかし、民進党から希望の党への移籍手続きの際の「排除の論理」が批判を浴びて、小池新党は急失速した。細野氏は、菅直人、野田佳彦・両元首相ら旧民主党政権での「三権の長(首相や衆参議長)経験者」の排除を公言したことで、3分裂を余儀なくされた多くの民進系議員からの恨みも買った。2018年5月の希望と民進による新党・国民民主党の結成にも参加できず、政界の孤児に甘んじていた。

一方、変幻自在の政治手法で「絶滅危惧種」と呼ばれる二階氏は、「来るものは拒まず」と自民無派閥組や保守系無所属議員を積極的に二階派に勧誘することで派閥勢力を拡大してきた。党内や選挙区の事情で行き場を失った議員達にとっても、同派は「生き残りのための唯一の駆け込み寺」(自民長老)となってきた。過去に旧民主系からも平野達男・元復興相ら有力議員を取り込んだ経緯もあり、1月27日投開票の山梨県知事選で、細野氏が二階派出身の長崎幸太郎氏(県知事に当選)を応援したことも「二階派入りへの環境整備」とみられている。

細野氏は二階派入会に当たり「静岡5区で育ててもらったので、ここでの活動は絶対に変えられない」としており、自民に入党すれば次期衆院選で吉川氏と激しくぶつかり合うことになる。だからこそ、吉川氏も「自民入党を目指すなら議員辞職すべきだ」と気色ばむ。

ただ、自民党内には「次期衆院選が任期満了かその直前までずれ込めば、静岡5区での激突も回避される可能性がある」(自民選対)と指摘する向きもある。というのも、細野氏は2017年6月に静岡県知事選への立候補を取り沙汰された経緯があるからだ。結果的に3選出馬を表明した川勝平太・現知事(70)との話し合いを経て川勝氏を支援したが、「知事選への意欲は消えていない」(細野氏周辺)とされる。

2021年の静岡知事選への転身も

次回知事選は2021年6月に予定されている。今夏の衆参同日選や東京五輪直後の2020年秋の解散が見送られれば、「細野氏が自民党に入党しても、知事選転出で選挙区での公認争いは回避できる」(自民選対)というわけだ。その時点でも細野氏はまだ40歳台、知事になっても中央政界復帰の可能性は残せる。選挙区では高い知名度と集票力を誇る細野氏だけに、自民党にとっても有力な知事選候補とはなりうる。手練れの二階氏がその辺を計算していたとしてもおかしくない。

もちろん、細野氏が同じ選挙区で衆院選を勝ち抜き、自民党内で認知されれば、政治家としての新たな未来を拓くことはできる。ただ、反自民を叫んだ細野氏の大胆な転身を、これまでの支持者が受け入れるのか。その点、「渡り鳥」と揶揄されても、したたかな処世術で出世の階段を登り続けた小池知事は「例外中の例外」(自民長老)とされる。

2017年秋の衆院選の直前に、「民進党の中で三権の長を経験した方は、(希望入党を)ご遠慮いただく」との細野氏の“排除”発言に、野田前首相はすぐさま「先に離党していった人の股をくぐる気はまったくない」と応戦した。細野氏は選挙後に「あの発言は上(小池知事)からの指示でやむを得ず…」と野田氏に謝罪したとされるが、「そのこと自体が政治リーダーとして失格」(立憲民主幹部)との声は今も消えていない。細野氏にとって駆け込み寺での修業の前途は極めて厳しそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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