最低賃金の引き上げが「世界の常識」な理由

「韓国の失敗、イギリスの成功」から学ぶこと

コンサルティング会社のマッキンゼーの分析によると、過去50年間、世界の経済成長率は年平均3.6%だったそうです。

経済成長率は人口増加要因と生産性向上要因に分けて見ることができます。過去50年の3.6%という成長率は、人口増加要因と生産性向上要因、それぞれによるものが1.8%ずつでした。

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しかし、これからの50年間は、人口増加要因による成長が0.3%まで下がります。生産性向上要因による成長率が今までと同じ1.8%で推移すると仮定すると、世界経済の成長率は2.1%まで下がります。その結果、生産性向上要因への経済成長の依存度が、これまでの50%から86%まで急上昇するのです。

要するに、人口が増加すると、何もしなくても経済は勝手に成長し、政府の税収も伸びます。政府は、人口増加という数の力によって、高齢化により増加する社会保障の負担を捻出することも可能です。このような状況下であれば、政府は賃金など、民間企業の経営に口を出す必要はありません。しかし、人口増加要因による経済成長率が低下すると、政府は生産性向上に注目し始めます。

一方、日本のように人口が減少すると、人口増加要因は経済成長率にマイナスに作用します。経済成長率が下がれば、当然、国は苦境に立たされることになります。社会保障費をはじめ、高齢化によって増え続ける各種の負担分を捻出するためには、どの国よりも生産性を向上させなければなりません。

国が何もしなくても自然と生産性が上がるのならいいのですが、人口増加による経済成長と違い、生産性にはそのような都合のいいことは起きません。ですので、国が主導し、生産性を高めるための政策を打つ必要があります。

最低賃金と生産性の相関関係の強さに注目が集まるようになったのは、生産性向上に有効な方法を探した結果なのです。

「誰」が「なぜ」、生産性を高めるのか

先ほども書いたように、人口増加要因と違い、生産性は自然に上がるものではありません。誰かが意図的に何かをしないと、向上するものではないのです。生産性向上には設備投資や企業内の働き方の変化が必要ですので、意思決定と実行能力を要します。

研究者たちの研究で、生産性を上げる具体的な方法については解明されていますが、どういう動機を持って、誰が生産性の向上を決め、実行するかについては、まだ解明されていません。

生産性向上は競争の結果だという研究者もいますが、同じ国(経済)の中や、同じ業種の中でも、企業間で生産性の激しいばらつきが存在することも確認されていますので、競争だけでは説明できません。

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