アップル減益決算で見えた「好感と悲観要因」 「高付加価値路線」と収益の多様化を進める

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アップルは昨年11月「今後はiPhoneだけでなく、個別製品の販売台数・平均販売価格を発表しない」と発表した。発表したルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は、同じジャンルの製品でも価格の幅が広く、販売台数が業績を投影する指標として正しくない(むしろ誤解を与える)としていた。

言い換えれば、台数を伸ばすのではなく、製品の付加価値を高めることで収益性を高める戦略を徹底するということであり、そうした意味では同社の戦略は着々と進んでいるとも言える。

しかし、今後の持続的な成長には疑問もある。

主力事業のiPhoneを、より高い付加価値のiPhone Xファミリー(iPhone Xの派生製品)へと少しずつ切り替えているアップルだが、すでに3製品(XR、XS、XS Max)にまでラインナップは広がった。旧世代のiPhoneからの買い替え、あるいは大型ディスプレーモデルであるiPhone XS Maxの需要が一巡した後、さらに収益性を高める方向性は見えない。

中国や新興市場での弱含みな展開が続くのであれば、先進国市場の飽和とともに、iPhone事業のさらなる成長軸を見つけることは容易ではないとみられる。

“iPhone以外”は19%伸びた売上高

一方でiPhone以外の売上高は、トータルで19%伸びている。

Mac mini、MacBook Airに新型が登場したMac部門は8.3%、教育市場向けソリューションを投入したiPadおよび大幅な機能刷新を図ったiPad Proを投入したiPad部門は16.9%、初めてApple Watchをフルモデルチェンジしたウェアラブル部門は33.3%、iCloudやApple Music、App Storeなどのサービス部門は19.1%、それぞれ売上高を伸ばした。

iPhone事業が全体に占める割合は、依然、大きなものではあるものの、その比率は61.7%まで下がっている。

好調だったApple Watch Series 4やiPad Pro、MacBook AirやAirPodsといった製品が需要を満たせるだけの出荷が間に合わず、第2四半期に売り上げを積み残したことも考慮するならば、今後の成長軸として中期的には期待できる存在となるかもしれない。

この決算発表前、アメリカのメディアCheddarが“関係者の話”として、アップルがスマートフォンゲームのサブスクリプションサービス(月額課金の加入者型サービス)を開始する予定だと報じた。まだ発表する段階にはないようだが、iPhoneおよびiPadという強力なコミュニティーを持つアップルが、加入者型サービスの売上高を重視する方向へ向かうのは自然なことだ。

サービス関連事業は2019年第1四半期の売り上げで108億ドル以上と、iPhoneを除く全事業で最も大きな比率。ここにアップル製品と親和性が高い加入者型サービスを加えていくことで、売り上げを積み増せることは、Apple Musicが過去に証明している。

ウェアラブル製品に関しても、Apple Watchの強力なライバルとなる製品が見当たらない現在、さらなる成長が見込めるだろう。

ただし、Mac、iPadに関しては新製品投入の効果が薄れてからが勝負となる。とりわけ昨年末に過去最大の大きなモデルチェンジを果たしたiPad Proに関しては、既存ユーザーの買い換えが一巡後、タブレット市場を拡張、牽引する存在になれるかどうか、iOSの機能強化にかかっている。

サービス事業、Apple Watchに加え、iPad Proの可能性を広げることができれば、iPhone事業への依存度を、また一段と下げていく道筋も見えてくるかもしれない。

サービス事業の強化、またハードウェアを一新したiPad Proに向けた基本ソフトのアップデート、近年力を入れている機械学習への研究開発投資成果は、6月に開催予定のWWDC(アップル主催の開発者向け会議)で何らかの動きが明らかになるはずだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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