発達障害の人の余暇から見える「重要な視点」 「選好性」の違いと捉えるとうまくいく

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「ひとり1本ずつ刺して、誰が人形を飛び出させるかを楽しむ」という「黒ひげ危機一発」の独特な遊び方をしているときに、ひとりだけ、「通常のやり方のほうが楽しい」と思う人がいたら、どうでしょう? そのひとりは、居心地が悪かったかもしれません。

日常の集団場面では、通常のやり方のほうが楽しいと感じて疑わない人たちが多数派を占めています。そのなかで少数派の人たちが通常とは違ったやり方を提案したとしたら、どうなるでしょう? 少しやってみて「つまらない」と不平が出て、通常のやり方に戻されてしまうのがオチです。

では、「黒ひげ危機一発」ゲームの参加者たちにみられる特性は、「通常のやり方を楽しむ能力の欠損」となるのでしょうか。

いえ、そんなことはありません。もしも、楽しみ方に優劣があると考える人がいるとすれば、それは多数派のおごりでしょう。自閉スペクトラム症の人たちの楽しみ方は、ただ少数派というだけです。

特性を、対人関係の「選好性」として考えてみる

発達の特性がある人は、一般的・平均的なやり方で生活することは苦手でも、その人なりのスタイルで生活するぶんには、とくに不便はないのではないかと思えてきます。

そう考えると、発達の特性を「〜が苦手」という形で、なんらかの機能の欠損として捉えるのではなく、「〜よりも〜を優先する」という「選好性(preference)の偏り」として捉えてみるほうが、自然なのではないかとも思えます。

ここでいう「選好性」とは、Aというものではなく、Bというものを選ぼうとする生来の志向性のようなものだと考えてください。好き嫌いの「嗜好性」ではなく、心が特定の方向に向かうという「志向性」です。

例えば「雑談が苦手」という捉え方を「雑談よりも内容重視の会話をしたがる」という選好性として考え直してみると、どうでしょうか。

ほかにも、「自閉スペクトラム症の特性がある人は、対人関係よりもこだわりを優先する」「注意欠如・多動症の特性がある人はじっとしていることが苦手だが、それは思い立ったらすぐに行動に移せるという長所でもある」といった具合です。

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私はそのように捉えたほうが、発達の特性をより適切に理解できるのではないかと思います。

皆さんにも、ぜひこの「選好性」という視点から、自分自身や家族、友人の特性を捉えてみていただきたいと思います。そうすることで、発達の特性が極端に苦手な特徴として目立つ前から「環境調整」を行うことができます。

「環境調整」とは、特性に合わせて生活環境を整えること。一般的には、特性を周りの人に理解してもらい、周りの人と一緒に生活環境を調整していくことを指しますが、ここではそれに加えて、本人が自分なりに世渡り術を身に付けていくこともひとつの環境調整と考えていくといいと思うのです。

本田 秀夫 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授

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ほんだ ひでお / Hideo Honda

精神科医師。医学博士。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。1991年より横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。その後、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長などを経て、2014年より現職。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本発達障害学会評議員。2013年刊の『自閉症スペクトラム』(SBクリエイティブ)は5万部超のロングセラー。

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