「#MeToo」を一時の流行にしない社会はつくれる 国外の状況を知り被害者を守る制度整備を

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荻上:下着は性行為への合意でも何でもなく「これはオシャレだ」「これは服だ」というメッセージ付きで。

安田:こういった提示を通じて、問題の訴えが可視化されてきたことも、この運動の流れの1つです。

伊藤:スウェーデンでの法改正の例のように、日本では2018年に「性暴力被害者の支援に関する法律」が案として提出されたのですが、残念ながら成立しませんでした。それに比してお隣の台湾は先進的で、性暴力を防止するための法律が6つ存在します。

伊藤詩織(いとう しおり)/ジャーナリスト。エコノミスト、アルジャジーラ、BBCなど主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信するほか、世界各国の性暴力に関する取材を進める。New York Festivals 2018では監督したドキュメンタリー『Lonely Death』が銀賞を受賞。著書に『Black Box』(文藝春秋)

また韓国も、性暴力に対する刑法は日本と似ていますが、他方で被害者救済に関する法律があり、その面では配慮が進んでいます。欧米の法制を参考にすることも大事ですが、同じアジア圏の国ではどうかを検討できることも重要です。

また台湾を例に取ると、それぞれの法律を所管する省庁や担当が明確です。他方日本の場合は横断的で、それゆえにそれぞれ行うべき事柄が不明瞭なままです。

全国的に「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」という組織が設置されていますが、その担当部局は県によって異なります。その結果、受けられるサービスも異なってしまう。

被害者がしてしまう理解しがたい行動

安田:被害に遭われた方に大きな負担を掛けるうえ、いろいろな場所をさまようことになってしまいます。今の話のように、この運動を契機として、国外の状況を知る機会を増やして、被害者を守る制度をどんどん取り入れるべきでしょう。

#MeToo運動のもう1つの意義として、国内外の性暴力に関する記事や論稿などの情報量がぐっと増えました。それにアクセスすることで、昔被害を受けた自分のことを肯定できるようになった人もいらっしゃいます。

先日、伊藤さん宛てのお手紙を送った方が書いてくださったことですが、被害を受けた方が、後々自分でも理解しがたい行動を取ってしまうときがあります。私が相談を受けた例でも、性暴力の被害にあった後、加害者に「昨日はありがとうございました」とメールを送ってしまった方がいます。後になって、その行動を悔やんでしまう。恐らく混乱しながらも、なんとか自分を正常に保とうとしているからなのでしょう。

それが、伊藤さんの言葉や、伊藤さん宛てのお手紙を送った方の記事を読んで、「被害に遭ったとき、普段は考えられない行動をとってしまうことがある」と知り、救われた。ナディアさんや伊藤さんのように自分の体験を本や記事にまとめてくれたことで、それを読み、救われた多くの人たちがいるはずです。

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