日清「大坂なおみ動画」炎上→削除問題の本質 グローバル企業として欠けていた視点とは
こうした議論は彼女の肌の色がいくらか明るくなっていたことは説明になるかもしれないが、鼻の形や髪の毛を徹底的に変えた作者の演出に対する説明はつかない。世界で最も人気のある有色人種の女性が日本アニメ風の普通の女の子になるという、ショッキングな変化に納得できる説明などあるのだろうか。
今回の件について日清は、「『テニスの王子様』の世界観を壊さないよう考えた結果で、(肌を白くすることは)意図的に行ったものではない」(広報部)と説明。広告の製作過程では大坂のマネジメント会社、IMG日本支社とやり取りをして了承を得たとしていたが、アニメ動画が公開された後、アメリカにあるIMG本社が製作過程を把握していなかったとして削除要請があったとしている。今後、新たなアニメ動画を作るかどうかは未定という。
「黒人と日本人のハーフ」が信じられない
一方、ベルギー人と日本人のハーフで写真家の宮﨑哲朗氏は今回の件をこう見る。「日本人アーティストは黒人の肌の色のつけ方をわかっていない。黒さへの『感覚』がない。いつも白人やアジア人の肌の色をつけているからです。でもこのスキルを『学ぶ』必要があります」。
同氏は、「Hafu2Hafu」というハーフのアイデンティティをめぐる世界規模の写真プロジェクトを続けている。これまで彼は日本人と外国人(100カ国に及ぶ)の両親を持つ150名にインタビューし、写真を撮ってきた。
「私のプロジェクトを見るかなり多くの“純粋な日本人”が、プロジェクトに出てくる黒人のハーフもハーフだとはほぼ信じられないようです」と、宮﨑氏は加える。「彼らにとってハーフといえば白人のハーフなのです。ですから、黒人のハーフは日本人のハーフなはずがなく、まして感情面や自己認識の面で『完全に』日本人とは考えていないのです。だから、『白人』の特徴がある人は日本人と関連付けられるのですが、黒人はいまだ『むずかしいこと』なのです」
そしてこれは、増え続けている日本在住の黒人ハーフの日本人や、アフリカ系の人々の間でよく認識されている日本人の態度である。つい昨年末、黒人ハーフの日本人バスケットボール選手であり国民的スターの八村塁はスポーツ専門サイト、ブリーチャー・レポートのインタビューでこう話している。
「日本で自分のことを知らない人しかいない地域にいるのは大変でした。彼らは自分を動物か何かのように見るので……渡米したかったのはそれも理由の1つです。誰もが違う。それは自分にとっていいことだと思いました」
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