「独り勝ち」トヨタ 横ばい予想の“真意”
ついに販売世界一をとらえたトヨタ。米GMや国内勢がつまずく中、あえて慎重な決算見通しを出したが……。(『週刊東洋経済』5月19日号より)
「(売上高25兆円の感想について)死角というより、われわれの課題がそこにある。まだまだ足りないものがあるという認識だ」(渡辺捷昭・トヨタ自動車社長)。
トヨタが5月9日に発表した前2007年3月決算は、その絶好調ぶりが際立った。売上高、利益ともに過去最高を更新。営業利益は日本企業で前人未踏の2兆円乗せ。07年1~3月期の販売台数では、四半期で米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜き、初の世界一となっている。
だが、今08年3月期については一転、慎重な見通しを掲げた。売上高が4.4%増の25兆円の一方、営業利益はほぼ横ばいの2兆2500億円とした。これはあくまで、連結ベースの見通しで、単独では4.4%の営業減益だ。明らかにトヨタは曲がり角を迎えたのがわかる。
頭打ちとみる最大の要因は、ドル箱である北米市場の鈍化だ。販売台数は全世界で889万台と4.3%増の見込みだが、前期の牽引役だった北米部門は今期1.6%止まり。4月の新車販売は2年振りの前年割れとなった。ガソリン高を受け、燃費のよさが支持されてきたさしものトヨタ車も、減速感は免れない。北米での現地生産を増やし、採算のよい日本からの完成車輸出が前期の22.2%増から今期は0.3%減へと落ちこむことも、収益面で響く。
為替も大きい。前期は対ドル・対ユーロともに円安で、7200億円の増益要因のうち、為替変動の影響が2900億円を占めた。今期は1ドル=115円と2円の円高を想定しているが、1円で約350億円利益が変動するから、それだけで700億円のマイナスである。
もっともトヨタは、今年暦年ベースでも販売世界一となるのが濃厚だ。今やトヨタ=ザ・ニッポンであり、GMや米フォード・モーターが軒並み経営不振の中で、独り勝ちで突出し、08年の大統領選挙前に米国と無用な摩擦を起こすのは避けたいところだろう。その意味で横ばい予想は、内にも外にも気を配った、「絶妙なバランス」の結果なのかもしれない。
先頭ランナーであるがゆえの「孤独」と「不安」に悩まされるトヨタが、これから今まで以上に難しい舵取りを迫られるのは、間違いないようだ。
(撮影:梅谷秀司)
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