痛くて辛い「インフル検査」は信用できるか 知っておきたい基礎知識を医師が解説
「そもそも風邪とは違うのですか?」という声も多く聞かれます。俗に言う風邪は「かぜ症候群」と呼ばれ、ライノウイルスやコロナウイルス、RSウイルスやアデノウイルスなどが主な原因ウイルスとなります。インフルエンザも同じウイルスが原因ではありますが、風邪の場合、インフルエンザほど高熱にはならず、咽頭痛や鼻汁、咳といった上気道の炎症による症状が中心で、重症化することはあまりありません。
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型があります。そのうち、ヒトに感染し流行を引き起こすのはA型とB型です。インフルエンザの流行には季節性があり、日本では、毎年12月から3月にかけて流行します。
では、どうして毎年流行するのでしょうか?
インフルエンザウイルスは毎年変異している
インフルエンザウイルスには、「型」だけでなく、「株」とよばれるさらに細かな分類があります。インフルエンザウイルスの表面の突起物であるHAの構造の違いを分類したものです。私たちのカラダの免疫システムは、このHAの構造を記憶しているのです。しかしながら、HAの遺伝子は毎年のように変異を起こします。そうすることで、インフルエンザウイルスは、われわれの免疫システムから逃れ、毎年流行し続けているのです。
こうしたことから、予防接種をすることがインフルエンザの一番の対策となります。FDAのゴットリーブ長官も、「FDAが承認したインフルエンザを治療する抗インフルエンザ薬はいくつかあるが、年に1度の予防接種の代わりにあるものはない」と述べています。
インフルエンザワクチンは、現在、A型とB型ともに2種類の株、つまり4種類の株に対応できるように作られています。その際、世界保健機関(WHO)を中心として、どの株が流行するかが予想されており、これまでに、予想が外れてワクチンが効かなかったという事態はほとんど生じていません。
また、インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンであり、病原体となるウイルスの感染能力を失わせたものが原材料となります。そのため、ワクチンを接種して得られた免疫は時間とともに弱まります。インフルエンザワクチンの場合、3カ月程度しか効果は持続しないため、流行のシーズン前に接種する必要があります。
米国疾病管理センター(CDC)のインフルエンザワクチンの有効性の報告によると、65歳未満の健常者ではインフルエンザの発症が70~90%減少、65歳以上の老人施設に入居されていない高齢者では肺炎やインフルエンザによる入院が30~70%減少、老人施設に入居されている方は、インフルエンザの発症が30~40%減少、肺炎やインフルエンザによる入院が50~60%減少、死亡リスクが80%減少したといいます。また、1歳から15歳の子供にも、インフルエンザの上気道症状に対して77%から91%有効であったとのことでした。