(第16回)「四字熟語・故事ことわざ」で綴る就職支援・第三話『書類作成』

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「自己紹介書」とエントリーシートは同じもの
面接で尋ねてほしいことを書く

 履歴書の右側にある自己紹介書に記載する内容とエントリーシートに記載する内容は基本的に同一のもので構わない。その理由は前述したように「一枚の用紙」に統一されていることが多いからだ。記載する項目は大別して四点になる。以下、項目のチェックをしておきたい。(数字はエントリーシート設問、アルファベットは履歴書の設問)
(1)あなたが学生生活で最も力を注いだことは何ですか。
(A)演習・研究課題と内容
(B)卒論のテーマ
(C)得意科目
(D)大学生活を通じて得たこと、強調したいこと
(E)課外活動(スポーツ・文化活動・ボランティア活動など)
(F)資格・免許
(G)最も興味のあることとその理由
 (A)(G)までの項目で忘れてならないことは、すべて大学生活の経験を尋ねられているという点だ。とりわけ(A)(B)(C)は大学生活の本分である学業にどのように取り組んできたかが問われている。「なにもやっていませんでした」では済まされない。「この段階までは理解していますが、その先は学習中です」といった表現が適切となるだろう。なお(B)の卒論については、まだ決定していないひとが大半だろう。そこで「このようなテーマで書きたい。内容はこのようにまとめたい」という構想ぐらいは記してほしい。(E)にはアルバイト経験は基本的に含まれない。これが企業側の考えだ。しかし、何も書くものがなければ、アルバイト歴を記すことも考えてよい。ただし、これは『窮余の一策』となる。アルバイト経験は自己アピール(自らの成長と進歩の体験)に使用したほうが効果的だ。(F)は高校時代に取得したものを記しても問題ない。また(G)については、みなさんの社会問題・時事問題への関心を問うものであると知るべきだ。
(1)あなたのセールスポイントは何ですか?
(A)私の特徴
(B)長所と短所
(C)趣味・特技
(D)自己PR
 このポイントは単なる自慢話に終わらせないことだ。自己PRの“PR”という表現に惑わされてはいけない。みなさんが大学生活のなかで何らかの体験をした場合、その結果を振り返ってみることが重要となる。うまくいった(成功した)ケースでは、どのようなやり方(工夫で)で成功につながったかを伝えたい。また失敗、挫折したケースでは、どのようにして、そこから脱け出したかを伝えたいものだ。失敗から学んだこと、得たことは、すなわち、みなさんの成長と進歩を意味する。
 (A)(B)は性格面での問いと考える傾向が強いが、決してそうではない。その意味で、長所だけを強調する書き方は得策ではない。人間誰しも短所、欠点はあるものだ。それらを自覚し、直そうと努力している姿こそ、まさに自己アピールにつながるのではないか。「明るい」「笑顔」などワンパターンの抽象的表現はまったく意味がない。また(C)は面接において必ず質問されるテーマである。
(2)入社したらどんな仕事をしたいですか?
(A)志望動機
(B)なぜ当社に入りたいのですかと同一質問
 大切なことは、あこがれ意識から脱却すること。あくまでも『仕事優先』の意識で職種志望をしっかりと記入することがポイントとなる。そのためにも『職種研究』は欠かせない作業だ。なお(A)志望動機は一社ごとに変えることを忘れないでほしい。
 面接を意識して記すことが意外に軽視されている。『ペンは剣よりも強し』なのだ。

 次回は具体的なエントリーシートの書き方のアドバイスを行いたい。『次回再見』、乞うご期待!
菊地信一(きくち・しんいち)
昭和27年仙台市生まれ。仙台一高、早稲田大学商学部卒業後、株式会社文化放送ブレーンを経て、平成2年より「現代職業工房」を主宰。この間一貫して人材採用をテーマに、採用戦略・計画に関するコンサルティングを行ってきた。企業と学生、両者を知り尽くした公正な立場に基づく本音のアドバイスは、企業セミナー、各種講演会でも好評を博している。『履歴書職務経歴書づくりの達人』(中経出版)、『就職活動のすべてがわかる本』(同文館出版)、『日経就職百科』(日経事業出版社)、『自己分析からはじめる就職活動 2010年度版』(日本実業出版社)、『キャリアデザイン入門』(光生館)など、就職関連の著書は45冊を数える。
現在、日本工業大学教授、北星学園大学非常勤講師、東北学院大学非常勤講師、コズモワールド顧問、文化放送キャリアパートナーズ学生支援部顧問キャリアアドバイザー、日本ジャーナリストセンター主任講師を務めるほか、講演・講義を行ってきた大学は85校にのぼる。
佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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