北陸新幹線のルート図によると、線路は東小浜付近を通り、新幹線駅がその一帯のどこかに建設される。街の規模を考えると悩ましい距離だ。地元では新幹線駅と市街地をより狭め、徒歩でも移動可能にしてほしいという要望が上がっている。
ただ、金沢から京都へ向かうコースや地勢、小浜湾と市街地の位置関係、市街地の背後の丘陵を考えるとハードルは低くない。北陸新幹線建設に際して在来線駅を移設した、長野県飯山市や新潟県上越市の事例が参考になるだろうか。
JR小浜駅は中心市街地の南端に位置する。ホームを発着する列車はほとんどが1~2両編成ながら電化され、2時間弱で敦賀―東舞鶴間を往来する。
敦賀―小浜間は1時間強、平日は1日15往復が走る。現行の整備新幹線の建設ルールでは、新幹線と並行する在来線などは開業と同時に、JRから経営分離される。だが、小浜線の扱いはまだ確定していない。検討が本格化するのは、まだ先になりそうだ。
駅から北へ延びる商店街は小ぶりながら活気があり、閉じたままのシャッターは思いのほか少ない。
小浜藩医を務めた医師・杉田玄白の像が建つ公立病院や「北陸新幹線小浜・京都ルート早期実現」の横断幕がかかる市役所前を通り過ぎると、やがて「鯖街道」の看板が目に入った。
小浜の「御食国」「鯖街道」が日本遺産に
小浜市は2015年、東隣の若狭町とともに日本遺産「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国(みけつくに)若狭と鯖街道」の認定を受けている。
「御食国」の名は、奈良時代以前から海の幸に恵まれ、天皇家の食料「御贄(みにえ)」を送り出していたことに由来する、と市の観光協会サイトにある。「鯖街道」は、若狭街道をはじめ、若狭湾エリアと京都を結ぶ街道群を指すという。海産物や文化が行き来した中で、サバの存在感が大きいことから近年、こう呼び習わしている。
小浜湾は古代から、畿内の台所であると同時に、大陸との交通ルートでもあったという。海岸から望む小浜湾は箱庭の湖のような趣があり、湾口のわずかな切れ目に水平線が浮かぶ。
千数百年、この地を結節点に選んだ人々のまなざしを、目の前の景観に重ねた。小浜は北前船の寄港地としても繁栄し、雨に打たれる町屋の並びが往事をしのばせる。市は「若狭おばま」のブランドを掲げ、「道の駅」「まちの駅」「海の駅」を整備してプロモーションと観光振興に余念がない。
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