「量産型」会社員はもっと自分を認めていい ひたすら「次の山」を登り続けるのが人生か

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オーストラリアで家族と暮らしつつ、日本でお仕事をされているタレントでエッセイストの小島慶子さんは、オーストラリア版人生ゲームを購入して感心したそうです。大学に行くか行かないかの選択によって、選べる職業は違いますが、大学に行かない場合、学費が不要なので手持ちのお金は増えます。その分、就職してからの年収は大学に行ったコースよりも低くなります。面白いのは、賃金を上げたくなったらナイトスクールに通って、もう一度、職業カードを引き直せる点です。

日本は世界でも大学での「学び直し」の機会が少ない国の1つです。無理ではありませんが、確かに44歳にもなってもう一度、大学や大学院に通うのはなかなか厳しいとは思います。ただ、社会人をターゲットとした大学院は以前よりも増えていますから、そうした選択肢がないわけではないと頭に入れておくことは大切です。

そこまでするのが無理でも、地域の公民館や男女共同参画センターでは、毎週のように大学教員による市民講座が実施されています。参加すれば知識が増えるだけではなく、近所に同じような問題意識を持つ知り合いができるはずです。あるいは、会社で認められているならば、本業に支障がない範囲で副業をしてみるのもいいかもしれません。

「あおり」を真に受けず立ち止まってみる

働く期間が40年、寿命が80年だとすれば、40歳というのは、会社員としては残り20年、人生としては残り40年とちょうど折り返し地点にいることになります。会社の外の世界をのぞくにはいいタイミングです。

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受験、就活、そして、社内の出世レースと競争は続いてきました。しかし、中年になって大切なことは、何歳になっても走り続けなければならないという「あおり」を真に受けず、そうした圧にさらされてきた自分を「鎮め」て、立ち止まってみることだと思います。

たとえば、有給を取って何をするでもなく、1日中、街をぶらぶらしたり、家でだらだらしたりしてみる。そうやって、落ち着いて見回したときに、会社、家庭、そして、地域がどのように見えるのか。よく旅は世界観を変えてくれると言いますが、いつもの風景がまったく違って見えるとすれば、それこそが自分なりの価値観に気がつくきっかけとなるのではないでしょうか。

田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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