「豚コレラ」発生がミニブタ2頭を襲った悲劇 「家畜感染症」から私たちが学ぶべき事は何か
豚コレラは、豚およびイノシシだけがかかる「豚コレラウイルス」を原因とする疾病で、人間には感染しません。
ですが、感染力や畜産業への被害の大きさと蔓延防止の観点から家畜伝染病予防法で「法定伝染病」の1つに指定されています。日本は2007年に清浄化の認定を受けましたが、今回新たに豚コレラの事例が発生してしまいました。世界ではアジアや南米を中心に多くの国で発生しており、島国である日本の水際での防疫措置が非常に重要である病気の1つです。
豚コレラウイルスは、強い感染力が特徴で、感染動物との直接的な接触や鼻汁・排泄物の飛沫・それらの付着物への間接的な接触によって感染します。たとえば、豚コレラに感染した豚の排泄物が微量に含まれた土を別の農場に持ち込んでしまったり、感染豚に触れて鼻汁が袖口などについたまま別の豚に触れてしまったりしたときに感染が成立してしまうのです。
感染した豚やイノシシは、41度以上の高熱と食欲不振、うずくまりといった行動を見せるようになります。急性の豚コレラの場合は運動失調、下半身のマヒ、下腹部や尾に紫斑が見られて数日から2週間で死亡します。慢性の場合は一度回復しますが、再度高熱と食欲不振の症状を呈し、最終的にはやせ衰えて1カ月~数カ月で死亡します。
このように、かかってしまった豚は死亡してしまうことがほとんどであるうえに、感染力が強いためほかの近隣農場にも伝播してしまいます。発生して蔓延してしまうと畜産業に大きな打撃を与えてしまうため、日本での豚コレラの基本は侵入防止と早期発見・早期摘発が最重要となっているのです。
家畜伝染病が蔓延してしまって日本から豚が消えていく――。仮にそんなことが起きてしまえば、日本産の豚肉の値段は高騰し、気軽に「とんかつ」や「焼肉」を食べられなくなってしまうこともありうる話なのです。
意外と身近な家畜の感染症
家畜の感染症は人間の感染症と異なり、「自分事」になかなか感じにくいかもしれません。
家畜の感染症といえば、記憶に新しいのが2010年3月頃に宮崎県で発生した「口蹄疫(こうていえき)」。2010年7月4日の終息確認まで、29万7808頭の家畜が殺処分されました。その時の損失は1400億円に上り、宮崎の畜産業が大きな打撃を受けたことをご存じでしょう。
畜産大国でもある宮崎での口蹄疫の発生は、経済的にも大きな被害を発生させてしまいました。このように、私たちの安定的な食生活や、畜産業そのものを維持するためにも、家畜の感染症の予防や早期摘発は非常に重要なのです。
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