オートサロン活況でも決定的に足りない要素 東京モーターショーの存在価値はどこにある

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ダイハツ「ハイゼットトラック」のコンセプトモデル(筆者撮影)

だが、筆者の見立てとしては、東京オートサロン来場者の多くの目的は、クルマやクルマ関連の部品の購入のためではなく、エンターテインメントとして、東京オートサロンという場を楽しむことを優先しているよう思える。

換言すれば、東京オートサロン盛況の理由は、エンターテインメントという仮想空間の演出にあるのではないだろうか。

だが、それは人為的な演出ではなく、東京オートサロンの変遷におけるヘリテージ(歴史)によって自然と創出されているように感じる。 

「非合法っぽさ」が作り出す空気感

東京オートサロンが誕生してからこれまでの経緯については、「オートサロンがここまで成長した歴史事情」(2019年1月20日配信)で触れた。

その中でも触れたが、そもそも東京オートサロンでは、数多くの非合法なクルマが全国から東京に集結したことによる独自の世界観が作り出されていた。それが徐々に、合法の領域へと歩み寄っていったという歴史がある。

今年のショーでも、展示車としては問題ないが、公道での走行は許されない非合法な車両が数多くあった。こうした「非合法っぽさ」が残っているからこそ、自動車メーカーのコンセプトモデルに対する「現実味」を感じるのではないだろうか。

また、「非合法っぽさ」という観点では、完全に演出された映画というエンターテインメント領域で、東京オートサロンとの親和性がある。今年のショーでは、今年9月に日本公開予定の『ワイルド・スピード』シリーズ最新作の普及促進活動が行われていた。プロモーションビデオ映像に、数多くの10代や20代の若い世代がくぎ付けになっていた。

映画『ワイルド・スピード』最新作の促進向けの展示(筆者撮影)

この邦題『ワイルド・スピード』というハリウッド映画は、2001年にアメリカで公開された『ザ・ファスト・アンド・ザ・フューリアス』が原点だ。この初作の撮影現場には、筆者も自動車部品関連の案件で立ち会っており、映画製作関係者らと意見交換した。

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