オートサロン活況でも決定的に足りない要素 東京モーターショーの存在価値はどこにある

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当時、米西海岸ではロサンゼルス近郊の中国系と韓国系の若手マフィアを中心に、ホンダ系のFF(前輪駆動車)を使って非合法な公道レースや、未成年に対してアルコール飲料や違法ドラッグを提供するイベントに違法改造車を展示するなどの動きがあった。これは映画向けの架空の話ではなく、実話である。

その後、ロサンゼルス近郊のレース場を借りて、ホンダ車を中心とした日本車が主体のドラッグレースを開催。そこに、日本での改造車ブーム冷え込みに頭を悩ませていた日本の改造部品メーカーや改造請負工場などの関係者が日本から車両を持ち込んで参加するようになった。

こうした社会現象を映画化したのだ。

邦題『ワイルド・スピード』は、アメリカの映画関係者の予想を超越する大ヒットとなり、日本車改造ブームが全米各地へと広がった。ところが、日本では合法と非合法との中間として走行できた日本車改造車の多くが、アメリカでは非合法との判断が下り、警察から一斉検挙。車両を没収されるなど厳しい措置となり、日本車改造ブームは約3年で一気に終焉した。

これを受けて、邦題『ワイルド・スピード』でも、2003年公開のシリーズ第2作まででアメリカ国内向けの改造車関連のシナリオを終え、続く2006年公開のシリーズ第3作では舞台を東京に移して、中国や東南アジア向けの興行収益増を狙った。その後は、登場する車両も日本車からアメ車に移行し、シナリオも世界征服を狙う悪との闘いといった方向に変わっていった。

つまり、非合法な日本車改造は映画の中でも長続きせず、映画のテイストとして「非合法っぽさ」だけが残ったといえる。

こうした雰囲気が、東京オートサロンとマッチするのだ。

東京モーターショーはどうすればいいのか?

では、来る東京モーターショーはどのように改良すれば、集客を上げることができるのか?

私見ながら結論を言えば、「多くを望まないこと」だと思う。

そもそも、モーターショーという形式自体が時代遅れなのだ。筆者は4年前に、フランスのパリモーターショー開催企業の社長から将来のモーターショーのあり方について提言を求められたが、その際に彼は「近年中にモーターショーは立ち行かなくなる」と予言していた。

事実、2018年開催のパリモーターショーは出展社が減少。それに輪をかけるように、2019年1月の北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)も出展社が急減して、地元企業の記者発表もほとんどなしという異例の状況に陥った。デトロイトショーは2020年から6月開催となり、屋外での音楽イベントを併催するなどして開催内容を刷新するとしているが、それで事足りるのかどうかは疑問である。

日産「ジューク」の雪上車をイメージしたコンセプトモデル(筆者撮影)

こうして世界各地の大型モーターショーが地盤沈下する中、東京モーターショーも時代の流れには逆らえない。

近年、東京モーターショーでは、自動運転、EV、コネクテッドカーなど、新しい技術領域の展示が増えているが、そうした内容は一般ユーザーの心にはあまり響いていないのが実情だ。それらは、アメリカのCESなど技術的な分野の見本市などに任せるべきだ。

また、「非合法っぽさ」が楽しい分野は、東京オートサロンのようなイベントに任せるほうがいいだろう。これからの自動車関連ショーは、各分野のスペシャリストが、その分野として集客可能な人々向けに最良の方法を講じるようなものが望ましい。「広く浅く」を狙う東京モーターショーの集客が伸び悩むのは致し方ないのだと思う。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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