「事故物件」、知らずに契約しないための知恵 プロが教える見抜き方と業界慣行の抜け道

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心理的瑕疵の物件の裁判では、個別のケースによって、それぞれの判断にばらつきがあり、なかなか断言できない部分があるのが現状である。殺人事件ならば、事件が起こってから何年まで告知すべきだとか、マンションならば、隣やほかの部屋にどこまで告知すべきだという明確な基準はまだ定まってはおらず、あいまいであるがおおむね義務はなしというのが、大まかな裁判所の判断となっている。

まず、ざっとポイントを説明すると、物件のある場所が都会なのか、それとも田舎なのかで大きな違いが生じることが挙げられる。これはたとえば、人の入れ替わりが激しい都心部の物件だと、人の記憶も薄れやすいとの判断が働いている。そのため、心理的瑕疵の度合いも低いとされるのだ。

ところが、田舎だと例え何年経っても、殺人や自殺などの記憶がそこに住む人々の間で、風化せずにずっと残り続けることが多いことから、心理的瑕疵の度合いが高くなるとされている。

建物がすでに取り壊されている場合は?

2つ目は、死因が自殺であるか、他殺であるかだ。当然ながら、病気を苦にした自殺と凄惨な殺人事件とでは同じ死でもやはり住み心地に影響するとされるからだ。そして、事故が起こってからどのぐらい経過しているかも重視される。契約をした日に近い日にちに自殺などが起こった場合、それは、心理的瑕疵として認められるケースが多い。逆に何十年も経過していた場合、一般的に心理的瑕疵は薄れてくるとされる。

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さらに、事故があった建物がすでに、取り壊されているかどうかなどは、心理的瑕疵の程度を判断するうえで、重要な判断材料となってくる。つまり、一般的に自殺や殺人があった建物がすでに取り壊されて土地だけになっている場合は、心理的瑕疵は認められていないケースが多い。建物がなくなったから、いいじゃないかという考えだ。

また、居住目的なのか、店舗なのかによっても違ってくる。家族などで住む場所としては瑕疵があるが、お店として使用するのだったら、それは薄れるというのが一般的な判断だ。

今後、さらなる情報化の発達によって、不動産業界にとって、「大島てる」のようなサイトの発達は抗えないと感じる。事故物件をめぐる裁判も増えるだろう。事故物件を隠蔽するのではなく、初めから貸す側、借りる側の双方にとって結果的によく、共存していく道なのではないだろうか。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)『母を捨てる』(プレジデント社)など。

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